航空ドローンの集団戦法「スウォーム攻撃」

航空ドローンの集団戦法「スウォーム攻撃」

無人航空機(UAV)・航空ドローンは年々、小型・高性能化し、軍用から民間まで広く利用されています。単価も安くなり、多くの軍や組織がドローンを所持しています。ドローンの用途は当初、上空からの撮影や偵察が目的でしたが、ドローンは殺戮兵器と変化を遂げており、自爆ドローンの「カミカゼドローン」が開発。そして、現在、各国が開発を進めるのがドローンの集団による攻撃「スウォーム攻撃」です。

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ドローンのスウォーム攻撃とは

スウォーム攻撃とは主にUAVといった航空機型のドローンを使った攻撃手法、戦法です。スウォーム(swarm)は集団を意味する英語。特定の目標を攻撃するために複数、もしくは数十台のドローンを使って攻撃する戦法です。

スウォーム攻撃の恐ろしい点は基本放たれたら、標的に向かって一直線に飛んでいくことです。例えば米軍のMQ-9リーバーは遠隔操作する操縦士がいて、標的の攻撃判断をカメラ越しに人間が行います。しかし、スウォーム攻撃は予め標的をGPSや画像などで設定。若しくはAIによって標的を識別します。ドローンは設定された標的に向けて自律航行、その途中で人間の手を介せずに群れで襲い掛かります。ドローンはネットワークで相互リンクされ、互いに情報共有し合いながら標的を狙います。

飽和攻撃に防空システムが対処しきれない

エンド・オブ・ステイツ

スウォーム攻撃の脅威は集団戦法です。無数のドローンの同時攻撃に対し、対空システムが対処できないことを狙っています。例えば対空ミサイルなど一基あたり多くても6~8発なのでそれ以上の数が来られたら対処できませんし、機銃のCRAMやCIWSは毎分4000発で多くの標的に対しては直ぐに弾を撃ち尽くしてしまいます。スウォーム攻撃は迎撃されことを見込んで、対空システムをかいくぐった複数のドローンによる攻撃を想定しています。イスラエルは敵対する隣国レバノン、シリアが対処しきれないドローンを配備しているとされています。

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ミサイルより単価が安い

ミサイルを数多く撃てばいいと思うかもしれませんが、ミサイルは一発あたり、数億~数十億になり、そう何発も撃てません。それに対してドローンは安い物は数十万~数百万で製造が可能です。GPS設定の自律航行だけなら民間ドローンでも可能です。その単価の安さからスウォーム攻撃が実現できます。

最初のスウォーム攻撃

スウォーム攻撃が最初に見られたのは内戦が続くシリアです。2018年1月、シリアにあるロシア軍のフメイミム空軍基地とタルトゥース海軍基地が爆発物を搭載した自爆ドローンによる攻撃を受けます。空軍基地には10機、海軍基地は3機の計13機による攻撃でした。ロシア軍は対空兵器によって7機のドローンを撃墜、アンチドローンシステムによって6機を制御不能、強制着陸させます。着陸時に3機のドローンが爆発しますが、致命的な被害は免れました。しかし、その後もドローンによるスウォーム攻撃は何度か続き、計60機のドローンを撃墜します。これらのドローンはシリアの民兵またはISISが民間のドローンを改造した物で兵器としての性能は脆弱で、ロシアの優秀な対空・対ドローンシステムには歯が経ちませんでした。

だが、2019年9月に対空システムのあるサウジアラビアの油田がドローンのスオゥーム攻撃によって炎上、破壊されます。複数の巡航ミサイルも含んだハイブリット攻撃でしたが、その数に対して対空システムが対処仕切れなかったとみられています。この時、各国は集団によるスウォーム攻撃の脅威と有効性を改めて認識します。

ドローンのスウォーム攻撃に関してはアメリカ、イギリス、イスラエル、ロシア、中国、イランなど軍事研究を進めています。

攻撃だけではない

ドローンのスウォームは何も攻撃だけではありません。例えば対ドローンとして、ドローン攻撃に対してドローンに体当たりさせたり、網羅的にドローンを配置することで基地や施設の警備行います。または災害時などにおける被害状況の確認や人の捜索などにも使用できます。

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