アメリカ海軍は選定を進めていた通信中継・空中指揮機E-6マーキュリーの後継機にノースロップ・グラマン社が開発する「E-130J」を選択した。E-6は「Doomsday plane(終末の日の飛行機)」とも呼ばれる機体でE-130Jは次期、「終末の日の飛行機」になる。
@USNavy announced Wednesday that @northropgrumman was awarded a contract to conduct the mission-systems integration for the E-130J, which will relieve the E-6B Mercury of the TACAMO mission.
— NAVAIR (@NAVAIRNews) December 19, 2024
Read about the contract and this joint effort with #PMA271 here https://t.co/VGhmD3iu0K pic.twitter.com/j65HLIEXBk
アメリカの軍需大手ノースロップ・グラマン社は12月18日、プレスリリースで米海軍の次期「Take Charge And Move Out(TACAMO)」ミッション向けの核指揮統制通信(NC3)航空機を納入する主契約者に選ばれた事を発表した。同社は米海軍の次期TACMO機の開発をめぐる35億ドル規模の競争で、同じアメリカの防衛企業コリンズ・エアロスペースに勝利した。現在、米海軍機でTACMO航空機を担っているのは1989年から運用されているE-6Bマーキュリーになり、その後継機として同社はE-130Jを納入する。
ノースロップ・グラマン社は2023年4月、通称「終末の日の飛行機」の次世代機”E-XX”の開発競争入札にロッキード・マーティン傘下のスカンクワークスとレイセオン、クレセント・システムズ、ロングウェーブ社と共に参加を表明していた。契約はノースロップ・グラマンが主契約者となり、アビオニクス、超低周波システムを含むTACAMOミッションシステムを、ロッキードマーティン社が製造するC-130J-30に統合する。機体は既存の物を改良する形で政府から支給される。契約には、エンジニアリング開発モデル (EDM) 3 機と、最初の生産ロットで最大 3 機のシステム実証試験品 (SDTA) と最大6機の航空機のオプションが含まれる。納入時期は発表されていない。
E-130J
E-6は運用開始から30年以上が経ち、機体は老朽化しており、米海軍は2024年度の予算請求でTACMO機の近代化の必要性を訴えていた。現在のE-6Bは運用コストが高い上、旅客機のボーイング707をベースにしていることもあり、離着陸に必要な滑走路の長さが非常に長く、有事が起きた時、滑走路が破壊されれば運用は難しいとされていた。そこで、海軍は次期TACMO機を開発する「E-XXプログラム」では、ロッキード・マーティンのC-130Jスーパーハーキュリーズ輸送機をベースに開発する事を決定。C-130は未舗装の平地でも離着陸可能で、離陸距離が短いので空母から発着艦ができる。さらにC-130J‐30はC-130Hと比べ、ペイロードが19tから20tに、全長は4.57m伸び、容量も増加。巡航速度も550km/hから650km/hに、航続距離は3800km(C-130H)から5250kmと大幅に性能が向上。ミッション対応力が高く、戦時中に適した機体だ。E-6より機体がコンパクトになるため、乗組員数はE-6Bの22名から14名未満に削減される。
通信中継・空中指揮機(終末の日の飛行機)
地上の軍司令部が攻撃を受けて無力化されても、大統領や国家指揮権限者を乗せ、空中から指揮、核兵器の発射指示を行えるよう、高度な通信設備一式を搭載し、TACMOミッション(Take Charge And Move Out)を行えるように設計された機体だ。核戦争の際は核の指揮・統制・通信システム(NC 3)を担い大陸間弾道ミサイル(ICBM)と潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)、戦略爆撃機に発射指示を与える。TACMO機は1960年代から運用されており、1989年にボーイング707-320をベースにした、今のE-6Aが就役、1998年には改良型のE-6Bが配備される。同機の最大の特徴は通信が難しいとされる水中の原子力潜水艦とスムーズに交信ができることで、核戦争の際は水中に潜む戦略核ミサイル原子力潜水艦(SSGN)に潜水艦発射型弾道ミサイル(SLBM)による攻撃を指示する。同様の目的で米空軍はE-4Bナイト・ウォッチを運用している。