インド海軍は同国初の国産空母ヴィクラント(Vikrant)の就役を8月15日に控えています。ヴィクラントは艦載機としてロシアのMig-29Kを搭載することを決定していましたが、今年に入って新たにアメリカのF/A-18Eスーパーホーネット、フランスのラファールMのテストを要求しました。
STOBARからの離陸は初
インド海軍はヴィクラントに搭載する艦載機のテストを行うために米国に2機のF/A-18Eスーパーホーネットを要求しました。5月末までに、2機のスーパーホーネットはゴアにあるインド海軍による離着陸テストのために地上試験場に到着します。
ボーイングが開発製造するスーパーホーネットはアメリカ空母打撃群の主力戦闘機で、信頼と実績ある艦載機です。しかし、ヴィクラントで運用する上で懸念があるのが発艦方式の違いです。米国の主力空母であるニミッツ級の発艦方式は蒸気カタパルトを使用するCATOBARになり、僅か2秒で300km/hまで加速させます。それに対しヴィクラントはスキージャンプ方式のSTOBARになり、艦載機は自力で甲板を滑走して発艦しなくてはなりません。スーパーホーネットはSTOBARでの発艦経験はなく、インドで最大離陸重量でSTOBARから離陸できるか検証する必要があります。
もう一つの候補ラファールM
インド空軍は2020年にフランス・ダッソー社のラファール36機を94億ドルで購入するなど、インドはフランスの重要な顧客です。ラファールにはフランス海軍の空母シャルル・ド・ゴールで運用され、核兵器も搭載できる実績十分の艦載機仕様のラファールMがあります。運用中のラファールと共通性があるのも大きなメリットになります。
しかし、ラファールMもCATOBARでの運用実績しかなく、STOBARでの運用経験が無いため、今年1月にスーパーホーネット同様、STOBARでの地上試験を行っています。ただ、スーパーホーネットより先にテストを行っており、その後、スーパーホーネットのテストが追加されたということはあまり、テスト結果が芳しくなかったのかもしれません。
ロシアのMig-29Kの採用が決まっていた
インド海軍はヴィクラントに搭載する戦闘艦載機として2015年にロシア・ミグ社のMig-29の艦載機モデルであるMig-29Kを選定。2009年から2017年にかけて45機が納入されています。ロシア海軍はSTOBARの空母アドミラル・クズネツォフを運用しており、既に実績があるのと、同じくSTOBARのインド海軍空母ヴィクラマーディティヤで運用実績がある機体です。ヴィクラントでは24機のMiG-29K戦闘機が運用される予定でした。しかし、導入直後に墜落事故、着陸の度に損傷とインド海軍の要件満たしておらず、更に2014年のクリミア侵攻の経済制裁により、インドが求めるコンポーネントの組み込みができませんでした。更に今回のウクライナ侵攻の追加制裁により、今後のサポート、生産も保証できない状態で、このままMig-29Kを艦載機として運用するにはリスクがあります。また、アメリカ側としても日米豪印戦略対話(Quad)で同盟結ぶ関係上、インドの軍事市場からロシアを排除したいと思惑もあります。
スーパーホーネット、ラファールMのテスト結果が思しくなかった場合はMig-29Kが使い続けられるかもしれません。
空母ヴィクラント(Vikrant)とは
IAC Vikrantは2009年に建造が始まったインド初の国産空母。全長262m、最大幅62m、高さ59m、14のデッキがあり、最大40機の固定翼機、回転翼機を搭載できます。乗員は約1,700人、女性将校を収容するためのキャビンを含め、2,300を超えるコンパートメントがあります。最高速度は約28ノット(52 km/h)、巡航速度が18ノット(33.37km/h)、航行距離は約7,500海里(約13,900 km)。2022年8月15日の就役を予定しています。
Source
https://www.hindustantimes.com/india-news/us-f-18-fighters-to-be-tested-for-ins-vikrant-at-goa-on-may-21-101649214644477.html
https://thewire.in/security/indian-navy-rafale-m-vikrant-evaluation