『トップガン・マーヴェリック』が公開されてから1か月が経とうしているが、いまだ人気は衰えていない。公開当初はネタバレになるので控えていたが、既に見てる人は見ていると思うので、本作に登場する機体を紹介したいと思う。ネタバレも含むので、まだ見ていない人は読まないでください。
F/A-18E/F スーパーホーネット
今作の主役となる機体。1970年代にマクドネル・ダグラス社(現ボーイング)が開発、F-16との開発競争に敗れるも一基停止しても飛行可能なツインエンジンを採用する機体は海上運用に適しているとして米海軍、米海兵隊の空母艦載機として採用され、1983年に米海軍で運用が始まった。『トップガン』が公開された1980年代当時、米海軍の艦載戦闘機はF-14が主体だったが、F-14が2006年に退役後はF-18が主体に。米海軍・海兵隊はすでに初期モデルは退役し、現在は改良型の F/A-18E/Fスーパーホーネットが運用されており、劇中に登場するのもその機体になる。Eは「単座型」とFは「複座型」になり、マーヴェリックやルースターが乗っていたのはF/A-18E、フェニックスとボブが乗っていたのはF/A-18Fになる。
米海軍ではF-35Cという新しい第5世代ステルス戦闘機を採用しているが、劇中ではミッションにはF/A-18が適しているとしてF-35Cは外れている。艦載機仕様のF-35Cは2019年2月に初期作戦能力を獲得、トップガンの撮影が始まったのは2018年になり、タイムスケジュール的に撮影で使用するのは難しく、最新鋭機、一人乗りの単座型ということもあり、撮影に適していなかった。もし、トップガンの続編があるとすれば次はF-35Cになるかもしれない。
Su-57
劇中で登場する敵の機体は「第5世代戦闘機」という表現で具体的な機体名はあげられていない。しかし、そのフォルムから、この第5世代戦闘機がロシアのSu-57というのは一目瞭然である。Su-57はロシアのスホーイ社が開発した最新鋭の第5世代ステルス戦闘機。NATOコードネームでは「フェロン」と呼ばれている。大型の双発エンジンを搭載した超音速(マッハ2)でのスーパークルーズと三次元偏向ノズルの運動性に優秀なステルス技術から、その性能は二次元偏向ノズルのF-22を超えるのではといわれており、劇中でF-18では勝ち目がないと言っているのはそれが理由だろう。
Su-57の初飛行は2010年になり、2019年から量産、2020年から運用が始まっている。劇中では計3機のSu-57とおぼしき機体が登場するが、実はこの機体、2022年時点で量産機は5機しか作られていない。映画が製作された2019年に1機目の量産機が完成しているが、直ぐに墜落している。現在、Su-57が配備されいるのはロシアのみになる。
F-14 トムキャット
前作でマーヴェリックが搭乗していた機体。アメリカのグラマン社が開発した艦上戦闘機で1974年から米海軍で運用が始まる。艦載機、高額ということもあり、700機ほどしか製造されていない。古くはベトナム戦争から参戦しており、2003年のイラク戦争まで活躍。135機の敵機撃墜記録がある。米海軍からは2006年に全機退役しており、今作には登場しないと思ったが、劇中の敵国家がF-14を所有しており、敵地で撃墜されたマーヴェリックは駐機しているF-14を奪って脱出する
このF-14、実はイランで現役である。F-14はアメリカ以外ではイランしか採用していない。現在は敵国だが、F-14が登場した1970年代、イランはアメリカの友好国だったため、79機を採用。今回、マーヴェリックに課せられた任務は”ならずもの国家”のウラン濃縮施設を爆撃するというものだが、この「ならず者」の国名は具体的には示されていない。しかし、F-14を持っていること、ウラン濃縮施設の建造疑惑から察するに「ならず者」がイランを仮定していることが分かる。
ダークスター
冒頭に登場する極超音速機。これは架空の機体になるが、機体デザインのベースとなっていると思われるのが第6世代戦闘機NGADだ。これは今年に開発入ったばかりだが、空軍研究所AFRLがコンセプトイメージを発表しており、このイメージとダークスターは合致している。
もう一つ参考にしていると思われるのがSR-71ブラックバードになる。これは1950~60年代に開発された最高速度マッハ3の超音速偵察機で、1998年に退役している。この機体を設計したのがロッキード・マーティン社の開発部門の一つスカンクワークスになり、NGADの開発に関わっている。