現役のデルタフォース隊員に初の名誉勲章が授与、その壮絶な作戦内容は?

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現役のデルタフォース隊員に初の名誉勲章が授与、その壮絶な作戦内容は?

アメリカ陸軍特殊部隊デルタフォースに所属するトーマス・パトリック・ペイン曹長が9月4日に現役のデルタフォースメンバーとしては初の名誉勲章を受章した。ペイン軍曹は2015年10月22日にイラクで行われた救出作戦で危険を顧みず70人の人質を救出した。

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現役隊員が受賞するのは異例

アメリカ陸軍特殊部隊デルタフォースに所属するトーマス・パトリック・ペイン曹長
Photo by US army

米軍では優れた功績を果たして兵士には名誉勲章が授与されるが、今回、異例なのが受賞者が現役のデルタフォース隊員であることだ。デルタフォースは数ある米軍特殊部隊の中でも最高のTier1に属する部隊。隊員情報は最高機密扱いで公開されることはない。過去にデルタフォース隊員が名誉勲章を受章したことがあるが、それは映画『ブラックホーク・ダウン 』でも描かれた1993年のモガディシュの戦いで墜落したブラックホークヘリのパイロットを救出しようとして戦死した2人のデルタフォースオペレターで死後のことだ。

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作戦時の状況

アメリカ陸軍特殊部隊デルタフォースに所属するトーマス・パトリック・ペイン曹長
Photo by US army

2015年10月22日夜、第1特殊部隊デルタ作戦分遣隊の急襲部隊副隊長のペイン一等軍曹(当時)はクルド人特殊部隊と協力してイスラム国の刑務所からイラク人人質を救出するためにイラク北部のキルクーク郊外にあるハウイジャの町にCH-47ヘリコプターで向かっていた。

目的地には2つの家があって、そこに70人もの人質が拘束されているという情報が事前に伝えられていた。クルド人は人質がクルド人武装組織ペシュメルガの戦士と確信しており、彼らを解放することを切望。チームはこの作戦を遂行するために1週間以上訓練してきたが、刑務所郊外に新たに墓穴が掘られていることを確認、これは近く処刑が行われることを意味し急ぎ作戦実行された。

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CH-47から降り立った隊員たちは直ぐに敵から攻撃を受けた。ブラウンアウト(着陸時の砂煙)に紛れて敷地に向かって進むも、激しい十字砲火にクルド人部隊は動けなくなる。ペインと他のチームメートはそれを見て「ついて来い!」と叫び、チームは更に敷地に向かって進み、壁を越えて侵入した。

チームは2つのグループに分かれ各建物を襲撃。ペインのチームが第一目標にたどり着くと、もう一方のグループの1人が撃たれたという無線が入る。ペインと一緒にいた衛生兵は、もう一方のチームへ向かった。

Photo by US army

ペインのチームは鍵のついた鉄のドアを見つけ鍵を切ってドアを開けると、そこには捕らわれていた人質40人が居た。人質を無事確保した時、また無線が入る。それは第二目標で敵の激しい抵抗を受けていると内容だった。ペインは直ぐに部下を連れて第二目標に向かう。

ペインと部下は第二目標の建物の上に登ると、屋根から真下の敵へ銃火を浴びせ、手榴弾を落とした。するとISIS戦闘員が自爆ベストを爆発させ始め、建物が炎上する。屋根からの侵入が難しいと気付いた彼らは下に降りる。この時点で、建物内部にはまだ敵戦闘員がいる状態で炎上。さらに差し迫っていたのは、残りの人質たちも内部に閉じ込められていることだった。

ペインと彼のチームは窓を破ろうとしたが鉄格子があってできなかった。窓からのぞくと、最初の建物と同じタイプの鉄のドアが見えた。彼らはそこに人質が居ると確信し、ペインはボルトカッターをつかんで建物の中に入っていったが、残っていた敵の攻撃を受ける。それでもペインは銃弾と炎、煙の中、ボルトの切断を試みる。しかし、煙が濃くなり最初のボルトを切っただけで立ち去らなければならなかった。続いてクルド人兵士が二番目を切るために駆け込んだが、攻撃と煙のために断念。するとペインは再度カッターをつかみ、煙の中に入っていった。

Photo by US army

なんとかボルトをカットし、ドアを開けると残りの人質が見えた。他の隊員も突入し残りの敵を無力化しようとしたが、建物は爆発と火災によって崩壊し始めていた。彼らはやむを得ず銃撃戦の中で人質を救出しなければならなかった。ペインが先導して、人質を安全な場所へと移動させていく。

しかし、建物の状況はひどくなるばかりで、急ぎ建物から避難するように人質に呼びかけ、チームと人質たちは建物から脱出、人質たちが走って逃げる間も、交戦は続いていた。

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人質全員を解放したかに思えたが、ペインにはそれを確認する義務がある。彼は再び建物の中に駆け戻り、周囲を見渡すと床に横たわっていた人質を見つけた。彼は引きずって安全な場所まで移動させると、また建物の中に戻っていって、誰も置き去りにされていないかを確認した。

ペインは部下、クルド人部隊と人質が全員脱出していることをその目で確認すると、全員ヘリに乗せ、その場から離脱した。人質たちは朝の祈りの翌日に処刑すると伝えられており、あと一日遅ければ人質の命はなかったかもしれない。

無事に成功したと思えたが

敵の激しい反撃を受けはしたものの、70人の人質を救出、無事作戦を成功させたに思えたが、序盤の戦闘で撃たれたジョシュア・ウィーラー曹長が戦死していた。ウィーラー曹長はクルド人が激しい銃火に怖気づくなか「私について来い」と先導して、クルド人部隊を十字砲火の中から脱出させる間に撃たれていた。彼のおかげでクルド人部隊は建物に到達でき、人質を救出することができた。

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https://www.army.mil/article/237811/army_ranger_to_receive_medal_of_honor_for_hostage_rescue_mission
https://www.army.mil/article/238677/medal_of_honor_amid_intense_gunfire_soldier_risked_life_to_save_hostages_from_isis

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