昨年の火災で甚大な被害を受けたフランス海軍のリュビ級原子力潜水艦6番艦の「Perle(ペルル)」。ペルルを建造したフランスの造船メーカーNAVALは損傷した部分を輪切りにカットして、使用可能な部分を同級の原潜とくっ付けて一つにするという前代未聞の修復を行い、その一部始終を動画で公開しました。
1990年に就役したペルルは昨年6月、南フランスのトゥーロン造船所のドッグで修復中に起工中に火災に見舞われ、14時間にわたって延焼し、艦内前方区画が大きく損傷するも後方部分は無傷でした。しかし、潜水艦に耐圧に関わる鉄骨構造部分が損傷していたため、修復は不可能とされました。廃艦も検討されましたがフランス軍事省は修理を決定します。
実際の修復映像
そこで考案されたのが、損傷した部分に同級の潜水艦部分をくっ付けるという方法でした。幸いにも2019年に退役していた同級の2番艦「Saphir(サフィール)」がシェルブール港の造船所で解体待ちで無傷のまま残っていました。ペルルをシェルブールに移送し、2月にペルルの損傷部分を輪切りに、そして、3月にサフィールの流用する部分を輪切りにします。4月初めからペルルの後方部分とサフィールの前半部分をくっ付ける溶接作業が始まります。溶接の前に3Dデジタルモデルで全てシミュレーションが行われており、一連の作業には300人のスタッフが従事。合計10万時間の検証と25万時間の作業を擁しました。艦内を通る配管やケーブルをつなぎ合わせる「ジャンクション区画」を設けるため、ペルルの全長は事故前の73.6mから1.4m延びて75mになり、乗員70人の居住空間が増設されます。2つの原潜がくっついた形になりますが、艦名は引き続き「Perle(ペルル)」になります。引き続きアップグレードの作業が行われ、艦隊への復帰は2023年を予定しています。
フランス海軍の攻撃型原潜は6隻体制
フランス海軍は、今後数年以内にリュビ級原子力潜水艦を次世代のシュフラン級原子力攻撃型潜水艦に徐々に置き換えることを計画しています。ペルルはリュビ級の中では最新鋭艦です。シュフラン級の一番艦「Suffren(シュフラン)」は2020年11月6日にフランス海軍に引き渡されています。計6隻の建造を計画しており、6番艦の就役は2030年を予定しています。フランス海軍は6隻の攻撃型原潜が必要であると考えており、現在リュビ級5隻、シュフラン1隻体制で運用されています。シュフラン級の2番艦の2022年を予定しており、ペルルが廃艦となるとこの6隻体制が崩れるため、思い切った修理に踏み切りました。