旧ソビエト連邦の構成国であった東ヨーロッパの小国ジョージア(グルジア)はアメリカのM4カービンライフルのローカライズ版であるGI-4カービンライフルの国内生産を始めています。
ジョージア政府は、今年の5月に南アフリカ、ポーランド、イスラエルの企業と提携してアメリカのM4ライフルをベースにした国産の”GI-4カービンライフル”と無人機(UAV)の開発を計画していることを公表、ライフルについては年末の生産開始を予定していましたが、10月28日に早くもジョージア政府はライフル工場の開設と生産を開始したことを公表しました。工場は地元のグルジア系ユダヤ人企業Delta CIEとM4ライフルの豊富な生産実績を有するイスラエルの銃器メーカーの合同企業によって運営されます。イスラエル側の企業は公表されていませんが、イスラエルでM4系ライフルを生産するのはIWIとエムタンの2社になり、そのどちらかと推測されます。工場はライフルだけではなく、付属品の生産も予定しています。国策であるこの工場は大卒の優秀な人材を集めており、将来的にはここで開発生産された銃器の輸出も計画しています。
AK-74からM4へ
旧ソ連のジョージアは他の旧ソ連諸国と同様、ソ連崩壊後の独立後もロシア系装備を継続して運用しており、主力小銃はこれまでロシア製のAK-74を使用してきました。今回の国産化に伴い、今後、主力小銃はジョージア版M4「GI-4カービンライフル」に取って代わることになります。 GI-4のスペックは不明ですが、他のM4のコピー同様、M4とほぼ同スペックになると思われます。口径・弾薬は少なくともNATO標準の5.56x45mmなります。 AK-74は5.45x39mmになり、弾薬は共有できなく、メカニズムもガラッと変わるので最初は兵站の点で面倒かもしれません。ただ、既にいくつかの部隊はM4ライフルに切り替えられているので、そこまで混乱はないでしょう。
AK-74の派生、アップグレードならともかく、なぜ、全く異なるライフルを採用するのでしょう。
ロシアとの対立
ジョージアは1991年にソ連の崩壊に伴い独立を果たしますが、ロシアに武力で制圧・併合された過去もあり、独立後は親欧米路線をとり、NATOやEUへの加盟を目指します。しかし、ロシア国境と接する北の南オセチア自治州とアブハジア自治共和国はロシアの影響が強く、ジョージアからの独立を求めます。両地域はロシアの後ろ盾もありジョージア政府の実効支配が及んでいませんでした。北京オリンピック中の2008年8月、ジョージアは南オセチアを軍事的に併合しようと進軍するも、これにロシア軍が反撃。圧倒的な国力差もあり、ジョージアは敗北、同地域の独立をロシアが承認します。その後もロシアの画策と思われる軍事クーデター未遂が起きるなど、ジョージアとロシアは対立を深めます。ジョージはロシア軍に対抗すべく、ロシア製兵器から欧米製の近代兵器への更新を近年進めており、今年の2月には米国から新しい機関銃とグレネードランチャーを受け取ったことを公表。年末にはイスラエルから移動式対空ミサイル防衛システムを入手する計画です。今回のM4ライフルの国産化もそういった背景からになります。ライフル製造に必要な機械工具類はアメリカ製になり、工場の開設時にはアメリカの国旗も掲揚されており、アメリカの支援が入っているのは確実でしょう。
Source
http://gov.ge/index.php?lang_id=GEO&sec_id=556&info_id=80641
https://georgianjournal.ge/military/37066-georgian-jewish-enterprise-to-start-producing-m4-rifles.html