国際原子力機関(IAEA)事務局長のラファエル・グロッシ氏は11日、IAEA理事会の9月会期開会時の記者会見でアメリカがウクライナに供与する劣化ウラン弾に関連して「原子力安全の観点からは重大な放射線影響はない」と述べた。
The use of depleted uranium ammunition does not entail significant radiological consequences
— NEXTA (@nexta_tv) September 11, 2023
IAEA chief Rafael Grossi said this at a press conference on the occasion of the opening of the September session of the IAEA Board of Governors.
"There are no significant radiological… pic.twitter.com/UMqKrscATz
グロッシ事務局長は月曜日の会見で記者団に対し、 「原子力安全の観点からは、この弾薬の使用による重大な放射線影響はない」 と述べた。ただ、「おそらく非常に特殊なケースでは、この種の弾薬で攻撃された場所の近くの人々が汚染される可能性がある。」と彼は続け、 「これは潜在的な放射線学的危険というよりも、通常の性質の健康問題に近い」 と付け加えた。IAEAは劣化ウラン弾の有毒性は認めており、破片を扱った場合に放射線を浴びる危険性があることは指摘している。
劣化ウランとは
劣化ウランは、完全ではないが放射性物質の大部分が取り除かれた天然ウランで原子力発電所や核兵器で使用するウランを製造する過程で出る副産物である。ウランは自然界で最も密度が濃い物質で、その比重は鉄の2.5倍、鉛の1.7倍とされ、非常に強固な物質だ。それを使用した弾頭は貫通力が高く、戦車の正面装甲を貫通する。アメリカのM1エイブラムスでは装甲にも使用されている。
しかし、劣化ウラン弾はウランを濃縮した後の放射性廃棄物を使用しており、弾頭には微量の放射性物質が含まれており、通常使用にはそこまで問題ないが、燃焼時に発生するエアロゾルを吸い込むことで汚染にさらさせるリスク、土壌汚染を引き起こすと前から指摘されている。IAEAも劣化ウランには「化学的毒性と放射性毒性」がある点は認めている。しかし、2016年、国連の原子放射線の影響に関する科学委員会 (UNSCEAR) は、劣化ウランの曝露で重大な中毒は引き起こされていないことを発表している。米疾病対策センター(CDC)、世界保健機関(WHO)も、劣化ウラン弾の影響による発がん性や白血病の増加を示す証拠はないと報告している。これらの見解にロシアは反発しており、使用は「犯罪行為」と糾弾しているが、ロシアも劣化ウラン弾は保有している。
アメリカは今年後半にM1エイブラムス戦車の提供と合わせ劣化ウラン弾を提供する事を表明している。イギリスは既にチャンレンジャー2戦車用に劣化ウラン弾をウクライナに提供。戦場で使用されているとされる。
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