中国海軍の拠点と引き換え?カンボジアは中国から2隻の056型コルベット艦を受け取る

海軍の拠点と引き換え?中国はカンボジアに2隻の056型コルベット艦を引き渡す

カンボジア国防省は4日、中国が056型コルベット艦2隻を引き渡す約束をしたことを発表した。同国のリアム海軍基地は近年、中国の援助で改修工事が進んでおり、同基地を中国海軍が拠点にするのではという懸念が以前から上がっており、コルベット艦の引き渡しは、その対価なのではと言われている。

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カンボジアメディアはカンボジア国防省のソチャタ報道官が、中国は来年にも海上哨戒用に新造の056型コルベット艦2隻をカンボジア海軍に引き渡すと述べたと報じた。衛星写真によると、中国の056A型コルベット艦2隻が昨年12月以来、長期間にわたってカンボジアのリアム海軍基地に新設された桟橋に停泊しており、艦艇の長期にわたる駐留は、中国海軍が同基地に排他的にアクセスできることを示すものと解釈され、地政学的懸念と憶測を引き起こしていた。

カンボジアは船舶の引き渡しは地域の平和、安定、安全、そして人道的任務を遂行する国の能力の確保に役立つと述べているが、カンボジアは近年、中国共産党との関係を深め、支援を受けてインフラの整備を進めている。2022年11月にはプノンペンと南部の港湾都市シアヌークビルを結ぶ約190kmの区間で、中国国有企業が20億ドルを投じて建設したカンボジア初の高速道路が開通。また中国政府は中国とカンボジア、タイ、ラオスを結ぶ高速鉄道インフラの開発に投資し、中国本土からタイランド湾までを繋ぐ陸路を完成させようとしている。その先にあるのがリアム海軍基地だ。リアムは世界貿易に重要な海峡として知られるマラッカ海峡、そして、ベトナムやフィリピンと領有権を争う南シナ海に近いカンボジア南西部に位置しており、中国がインド洋に進出する際は中継地として機能を果たす場所にある。

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©Blacksky

中国共産党はリアムをアフリカのジブチに次ぐ2番目の海外軍事基地、中国海軍基地として拡張したいと考えており、近年、港湾施設拡充のために資金を提供している。同基地はこれまで小型の巡視艇しか停泊できないような小さな軍港だったが、拡張したことにより、中国海軍の054型フリゲート、056型コルベット艦といったより大きな船舶の停泊が可能になった。今回、艦艇2隻の引き渡しを発表した事は、同港の第一次工事が完成した事を意味すると思われる。将来的には空母打撃群艦隊が停泊できるまでに拡張されるのではと推測されている。

アメリカやインド、及び周辺国は安全保障上の懸念を抱いている。有事の際はマラッカ海峡を中国海軍によって封鎖される可能性が高まり、南シナ海を北と南から包囲する形になる。更にインド洋への進出も容易になる。中国はインドの南に位置するスリランカのインフラ整備にも投資しており、コロンボ港国際コンテナターミナルに中国軍艦艇が度々寄港しているのが確認されている。また友好国イランともオマーン湾で合同軍事演習、イランの港に寄港するなど、インド洋沿岸に着々と拠点を設けており、リアム海軍基地が完成すればジブチとを結ぶインド洋を横断するシーレーンが完成する。カンボジアが中国とリアム海軍基地の使用に関する協定を結んだという発表は今の所ないが、同港には定期的に中国艦艇が駐留しており、両国の間には、中国がいくつかの施設を軍事目的で使用できるようにする秘密協定が既に存在する可能性が高いと言われている。

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また、中国がカンボジアに056型コルベット艦を引き渡す事で周辺地域との緊張は増すことになる。東南アジアの中でも最貧国の一つであるカンボジアは対艦ミサイル、対空ミサイルを搭載するような近代的な軍艦を保有していなかった。056型は2010年代から建造が始まった近代的な船で満載排水量1,440t、航続距離3700km、巡航速度51km/hを有する。ステルス性を意識した設計で武装には76mm速射砲、2基のツインセルミサイル発射装置、YJ-83対艦巡航ミサイル、および FL-3000N 短距離ミサイルシステムする。ベトナムはカンボジア海軍の強化、中国海軍の進出に対抗するため、カンボジアに近いフーコック島の海軍戦力を強化すると推測されている。

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