ロシアによるウクライナ侵攻が始まってまもなく、ウクライナが保有する世界最大の航空機「An-225ムリーヤ」はロシア軍の攻撃によって、無残に破壊され瓦礫と化し、世界中の航空ファンが落胆しました。唯一無二の航空機であったAn-225ムリーヤは二度と飛ぶ姿は見ることは無いと思われましたが、実は2機目が建造途中でストップしており、ゼレンスキー大統領は再建を明言しました。
An-225ムリーヤはもともとソ連版のスペースシャトルと知られる「ブラン」を輸送する大型貨物輸送機としてアントノフ設計局、現在のウクライナのO・K・アントーノウ記念航空科学技術複合体によって1980年代に開発建造された機体で、完成したのは「Mriya(ムリーヤ)」の1機のみになります。ブランの輸送はたった一度きりで、ソ連が崩壊すると機体はウクライナ所有に。その後は超大型貨物機として運用ビジネスを展開し成功。日本にも何度か飛来しています。全長84m、ペイロード250tなど航空機としての世界記録を複数保持しており、これまで「世界最大の航空機」として航空機ファンを魅了してきました。
ウクライナ侵攻開始早々に破壊される
Look at what they did to the world’s biggest cargo aircraft.
— Illia Ponomarenko 🇺🇦 (@IAPonomarenko) May 5, 2022
Antonov An-225 Mriya memorial hangar at the Hostomel Airfield. pic.twitter.com/nTu2wwKcF4
2月24日にロシアによる侵攻が始まった際、同機はキーウ近郊のホストーメリ空港に駐機していました。ロシア軍は開戦当初、制空権を握るため、ウクライナ軍の航空戦力を無効化すべく空港への攻撃を集中。同空港にも爆撃が行われ、格納庫に停まっていたAn-225も被弾、2月末には破壊されたAn-225が確認され、その後、同空港をウクライナ軍が奪還すると見るも無残なAn-225の姿が世界中に発信されます。ウクライナ語で「夢・希望」を意味する”ムリーヤ”と名付けられた唯一無二の希少な航空機は失われました。
ゼレンスキー大統領は再建を明言
ウクライナのゼレンスキー大統領はAn-225の破壊が分かると直ぐに再建する旨を示し、5月19日、ウクライナの学生とのオンライン会議に出席した際も会議の中でAn-225ムリーヤの再建する旨を表明。激戦地となったマリウポリで命を落とした人たちを称える記念として建造することを示しました。
実は70%が完成している2機目のAn-225
世界に1機しかなかったAn-225ムリーヤですが、もともとは2機の建造計画があり、2機目の建造も始まっていました。しかし、ソ連の崩壊による経済混乱による資金難、1993年にもともとの目的であった「ブラン」の計画自体が消滅したこともあり、1994年に2機目の建造はストップ。しかし、実はこの時点で既に機体の70%が完成していました。2009年に建造が一時再開されるも、完成までには3億ドルのコストが必要とされ、資金難でストップ。2016年には中国の中国空域産業集団が人工衛星の輸送用として関心を示すも同じく多額の資金が必要ということで撤退。2020年にゼレンスキー大統領は2機目を完成すべく、トルコのエルドアン大統領に支援を要請しましたが、同じく費用が難点となり、一向に話は進んでいませんでした。
建造がストップしてから既に30年近くたった現在、建造費用は増加しており、最新のアビオニクス、航空宇宙プラットフォームに対応には最大8億ドルの費用が必要とされ、再建への道は非常に困難で疲弊するウクライナでこれを賄うことはできません。そこで、これらの費用を補うために投資家、一般からの寄付を募ることを考えています。ウクライナの現状、唯一無二だった1機目を失ったことを考えれば、復興、再建のシンボルとして意外と資金は集まりそうではありますが、まず、建造を再開する上では現在の戦争を終わらせる必要があります。