現代の戦闘用ヘルメットは通常、頭の形に合わせ流線形になっており、頭頂部が丸い形になっているものだが、インド軍の一部の部隊はちょっと変わった形のヘルメットを着用している。それは、宗教的な理由になる。
命と宗教を守る
頭部の負傷は死に直結し、死を免れても後遺症を残すケースも多い。兵士にとって、頭を守る戦闘用ヘルメットは戦闘中の生死を左右する重要な装備の一部になる。だが、一部の兵士にとっては命と同様に大切にな物がある。それが宗教・信仰だ。インド軍には兵士の命と信仰の両方を守る役割を担った戦闘用ヘルメット「Patka(パトカ)」というものがある。
このパトカの特徴はその形だ。他のヘルメットと違い、頭頂部が平らで外側が広くなっているのが分かると思う。この形状はある特定の宗教の教徒のために考案されたものになる。
シク教徒のために作られた
インド人というと頭にターバンという布を巻いているイメージが強いと思うが、実はこれはシク教徒という一部の宗教信者のみになる。13.5億人の人口がいるインドでシク教徒の数はおよそ3000万人といわれ、2%と実は少数派だ。しかし、シク教徒は昔から兵士・軍人家系が多い。軍内でも要職に就くなど、軍における影響力が大きい。そんなシク教徒の男性には一つの戒律がある。それがターバンだ。ターバン着用が戒律上の義務になっており、外してはいけないのだ。
インドがイギリス統治された後は英軍が使用する鍔が付いて底の浅いブロディヘルメットがインド軍に採用されたが、シク教兵士はターバンが邪魔をして被ることができなかったため被らずに戦闘を続けた。その後、米軍のM1ヘルメットのような丸くてそこの深い「モデル1974」と呼ばれるヘルメットが導入される。これはターバンも付けて被れないことは無かったが、ターバンの上から被るには通気性も悪く非常に不快だった。しかし、兵士の生存率を考えるとヘルメット無しという訳にもいかず、ターバンを着用したシク教兵士が被れるように特別に設計されるたのがこの「パトカ」になる。
パトカは何が違う
ターバンを巻いた状態で被れるように、他のヘルメットと比べ、内径は広く作られている。防弾性能は非常に優秀で内側に配置された緩衝材は、弾丸や砲弾の衝撃を吸収する。前頭部はAK-47の7.62 x 39 mmから25mの距離から防ぎ、後部は9mm弾を防ぐ。暗視装置など各種ヘッドギアの装着も問題ない。モデル1974よりも全てにおいて性能が優れている。パトカは主に緊迫状態が続く軍事上最重要拠点のインド北部のカシミール地方を守る北部軍に支給されている。この地域は標高が高く一年を通して気温が低い。パトカはその防弾性と合わせて防寒具としても優れており、シク教徒以外も装備している。
パトカにもデメリットはある。側面からの攻撃には強いのだが頭頂部はほぼ保護されていない。シク教徒は髪を切らず、ターバンの中は大量の髪で埋まっており、ある程度の衝撃には強いものの、頭上からの攻撃には弱いのだ。そして、重量は2.5㎏と他のヘルメット比べ倍になり、長時間の行軍、任務には向いていない
インド軍は2017年になって、重量1.2㎏、全方位に防弾性能を擁する現代的な新しいヘルメット「MKU ACH」を採用した。徐々にこのヘルメットに切り換えられているが、パトカはまだしばらく運用され続けることになっている。
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