イスラエル軍の防空システム機能せず、兵士70名以上が死傷

攻撃を受けたイスラエル軍基地の食堂

イスラエル兵70名がヒズボラのドローン攻撃によって、死傷した。ロケット弾、ドローンといった空からの攻撃による一度の損害としては過去最大級の損害だ。これだけの被害を出した原因はイスラエル軍の防空システムがドローンを検知できなかったためとされている。

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レバノンの武装組織ヒズボラは13日日曜、イスラエル北部テルアビブ北の町ビンヤミナにある軍事基地に対し、ドローン攻撃を実施。兵士4人を殺害したと発表した。その後のCNNなどの報道によれば、自爆ドローンは兵士が集まる基地内の食堂に衝突。結果4名が死亡、67名が負傷、内8名が重傷を負うなど、71名の死傷者が出た。昨年10月に始まった戦争以降、イスラエル軍の一日の死傷者数としては、昨年10月7日のハマスによる奇襲に次ぐ規模とされる。これだけの損害を出した理由と報道されているのが、防空システムが機能しなかった事だ。攻撃時、基地に空襲警報は発せられておらず、兵士は避難行動をとっていなかった。つまり、防空システムのレーダーがドローンの接近を検知できず、基地への攻撃を許してしまったと言う事だ。システムが作動していなかったのか、技術的な問題、故障なのか、正常作動したが、ドローンを検知できなかったのか、原因は明らかにされておらず、イスラエル軍は今回の被害を認め、重要案件として調査中と発表している。

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高度な防空システムを配備するイスラエル

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イスラエルに設置されている防空システム「アイアンドーム」の数は?コストは?

イスラエルはご存じのように、世界で最も高度な防空システムを備えている。弾道ミサイルを迎撃する「アロー」、主に航空機、ミサイルを迎撃する「ダビデスリング」、ロケット弾、ドローンを迎撃する「アイアンドーム」と三重の防空網がある。今回の攻撃は自爆ドローンによるものなので、迎撃を行うのは「アイアンドーム」の役目だ。全天候型の射撃管制レーダー システムは4~70kmの距離にある空中脅威を検出し、ミサイルによって迎撃する。防御範囲は約155平方km。命中率は約90%、一つの対象に対し、ミサイル2発を発射するなど確実性が高い。また、即座に弾道計算し、需要地点への着弾有無を判断し、脅威の優先順位をつける。今回のような軍事基地は重要拠点であり、着弾可能性がある飛翔体はほぼ確実に撃墜される。しかし、今回はそれを防ぐ事ができなかった。

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今回、ヒズボラが攻撃に使用したドローンは「ミルサド(Mirsad)」と呼ばれる兵器で、もともとはイランが開発したもので、イランでは「アバビル-T(Ababil-T)」と呼ばれている。攻撃範囲は120km、最大高度3,000mを最高速度370km/hで飛行、偵察用途でも使用できるが40kgの爆発物を搭載して自爆ドローンとしても使用できる。特にステルス性があるわけではなく、ヒズボラはこれを2006年から使用しており、イスラエル軍もデータを持っており、既存の防空システムで検知迎撃できないドローンではない。

イスラエルメディアによれば、今回、ヒズボラが攻撃に使用したドローンは2機とされている。つまり、飽和攻撃ではなかった。そして、内一機は沿岸部で迎撃されている。もう一機はイスラエル空軍の軍用機とヘリコプターが追跡したが、ドローンは最終的にレーダーから消えたと指摘している。レーダーから消える直前、ドローンは非常に低空を飛行していた可能性があると指摘している。 レーダーから対象が消えた場合、イスラエルの防空システムは基本、目標が墜落したか迎撃されたと判断する。再度、検知されなければ、空襲警報は発令されない。ドローンはレーダーに検知できない超低空を飛行して基地に着弾した可能性がある。ヒズボラはここ最近、何度かアイアンドームを破壊したと映像付きで発表しており、アイアンドームの弱点を突き止めた可能性も否定できない。

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イスラエル軍の防空システム機能せず、兵士70名以上が死傷
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