オランダ、ウクライナに供与したF-16戦闘機によるロシア領内の攻撃を許可

オランダ軍司令官のオンノ・アイヒェルスハイム将軍は8月29日、国営放送局NOSの取材に対し、オランダはウクライナに供与したF-16をロシア領内で使用することを許可したと語った。

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アイヒェルスハイム将軍は、「戦争法が遵守される限り、我々はF-16の使用と航続距離にいかなる制限も設けていない。」と語った。つまり、ロシアとの国境周辺に限定せず、F-16をロシア領内奥まで飛行させて軍事拠点を攻撃することを認めた形になる。この方針はオランダから供与される他の兵器にも適用されると強調した。戦時国際法、国際人道法に従う限り、ウクライナ軍は”自らの裁量”で戦場でそれらを使用する権限が与えらる。 「我々はウクライナの勝利に尽力しており、彼らを支援するためあらゆる手段を講じている」と将軍は指摘した。本来、最終的な承認はF-16の開発元であるアメリカの承認が必要になるが、将軍はアメリカ側から部分的に同意を得ていると語っている。オランダのF-16はアメリカから購入したものではなく、国内でライセンス生産したものになるため、使用の制限に関する規定が若干緩いのかもしれない。オランダはF-16に搭載可能な対艦ミサイルAGM‐84ハープーンを提供している。射程は120km以上になるので、F-16と上手く併用すれば、国境から数百km離れたロシア領内の軍事拠点を攻撃できる。

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オランダは24機のF-16戦闘機を供与すると発表しており、機数は不明だが8月初めにウクライナ空軍に納入された6~10機からなる第一陣のF-16の中にはオランダから供与された機体が含まれており、ウクライナ空軍は直ぐにでもF-16を越境攻撃に使用できる状況ではある。ただ、機数は少なく、パイロットも機体と同じ人数しかいないとされる。更に先日には国内でF-16が墜落。機体とパイロットを失っている。墜落時はロシアから200機のミサイルと無人機が飛来しており、その防空のために出撃。混乱の中、自軍のパトリオットミサイルによって撃墜されたと言われている。

配備からまもなく、ウクライナ軍もまだ運用に慎重で、撃墜をさけるため飛行区域は前線から40km以上離れた場所に限定している。出撃も今のところ、防空任務が主で、攻撃に使用されたという情報はまだない。年内には20機ほどのF-16が揃う予定であり、本格的な運用は年明けからと推測される。

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しかし、ロシア領内への攻撃はそう簡単なものではない。ロシア国境に近くなればなるほど、ロシアの防空ミサイルに撃墜されるリスクが高くなる。F-16はステルス機ではなく、無人機のように小型ではないので、普通に防空レーダーにひっかかる。また、ロシア空軍は健在であり、ロシア領内であれば、ロシアが誇る戦闘機、第4++世代戦闘機のSu-35、そして、第5世代のSu-57が迎撃にくる可能性は高い。空戦能力はSu-35とSu-57の方が上であり、F-16のアウトレンジから迎撃可能な射程200kmのR-37長距離空対空ミサイルを搭載している。F-16が搭載するAIM-120 AMRAAM中距離対空ミサイルの射程は100km程だ。ロシア領内で撃墜されれば、パイロットが無事脱出できたとしても、救出できる可能性は低く、捕虜になるリスクが高い。パイロットは機体以上に貴重だ。ロシア側は最初のF-16戦闘機を撃墜した場合には1500万ルーブル(約2400万円)、その後は1機ごとに50万ルーブル(80万円)の賞金を出すと発表、人参をぶら下げている。

F-16の対地攻撃の運用が現実的なのは南部戦線とされている。実際、ウクライナ軍は南部ヘルソン及び、クリミア半島にあった防空施設をことごとく破壊しており、クリミアの防空網は壊滅状態にある。南部はF-16の出撃ができる状況は整っている。

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