ナイトウィッチ・夜の魔女といわれた女性部隊|第46親衛夜間爆撃航空連隊

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ナイトウィッチ・夜の魔女といわれた女性部隊|第46親衛夜間爆撃航空連隊
photo by runaruna.ru/

世界に先駆けて男女平等を掲げたのは実はロシア(ソ連)だった。1917年のロシア革命では女性に選挙権を与え、仕事での役職や賃金など男女間の差を無くし、男性と同じ権利を与えた。男女平等は軍隊においても同様で女性に戦闘任務を与えたのロシアが最初になる。そのため、第二次世界大戦のソ連では多くの女性が兵士として戦った。その中に女性だけで編成され、ドイツ軍に「夜の魔女=ナイトウィッチ」と恐れられた航空部隊があった。

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第46親衛夜間爆撃航空連隊

1941年6月にドイツによるソ連侵攻が始まり、独ソ戦が開戦する。ドイツ軍の電撃戦にソ連軍は太刀打ちできず、秋にはモスクワ郊外のスターリングラードまでドイツ軍は進撃していた。
ツポレフANT-37爆撃機「ローヂナ」でモスクワから樺太に近い極東のコムソモリスク・ナ・アムーレまで無着陸飛行したソ連の英雄で女性パイロット”マリーナ・ラスコヴァ”は祖国の窮状に他の女性パイロットたちと一緒に女性のみ航空部隊の創設を嘆願した。しかし、男女平等の当時のソ連といえど、空軍パイロットはまだ男性社会で多くの反対を受けた。しかし、国難という状況下、スターリン書記長ががラスコヴァの偉業を知っていたこともあり1941年10月にスターリンは3つの女性専用航空隊を作るように命じた。そのうちの2つは男女混合になったが、「第588夜間爆撃連隊」だけは女性のみとなり、初の女性航空部隊が創設、1943年には「第46親衛夜間爆撃航空連隊」に改称される。

指揮官はエヴドキヤ・ベルシャンスカヤ少佐が務めた。1942年5月までに17歳から25歳までの女性400人がエンゲルス航空学校に集まった。最初の命令は髪を切ることで、長い髪を切り、少年のようなベリーショートにした。6月12日には初出陣を行う。彼女たちは本来数年掛かって学ばなければならないことを僅か数カ月で学ばなければならなかった。

支給されのは旧式の機体Po-2

彼女たちの任務は部隊の名前通り、夜間の爆撃任務になる。そんな彼女たちに支給されたのは第二次大戦では時代遅れの複葉機「Po-2」。小さくて鈍足のこの機体は主に訓練や農薬散布に使用される機体だ。最高速度は120㎞/h、最高高度は3㎞しかない。 無線はなく、パイロットはコンパスとストップウォッチ、地図を見て目標地点まで操縦した。機体には防弾処理もされておらず、武装もなし。武器と言えるのは搭乗員が持つ8発入りの拳銃トカレフTT33、しかも、このトカレフは自衛用ではなく、不時着した際に捕らわれない為の自害が目的であった。そして、翼下に取り付けられるたった2つの爆弾になる。彼女たちは爆弾を投下しては基地に戻り、また出撃を繰り返し、多い時には一晩で18回の爆撃を繰り返した。
機体は鈍足だが逆にそれが功を奏し、ドイツ空軍の戦闘機メッサーシュミットBf109の失速速度よりも遅いので、照準が付けづらく撃墜するのが難しかったといわれている。しかし、木造であるがゆえ、数発でも機銃を受ければ瞬く間に炎上した。 しかも、彼女たちにパラシュートは支給されていなかった。

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夜の魔女

脆弱な機体ということもあり、爆撃は見つかりにくい夜間のみに限定されていたが、そんな機体にも利点はあった。機体部品の多くは木造と合板で防弾処理もしていないことで金属部品が少なかったためレーダーに探知されにくかった。その上で更にレーダー探知を避けるため低空飛行を行っていたので敵に見つからずに爆撃地点まで到達できた。爆撃地点の近くまで来るとエンジンを切り、滑空状態にして爆弾を投下した。夜間に行われる爆撃、そして、その静けさと滑空する時の音が魔女が乗るホウキの”ガサガサ”という音に似ていることからドイツ軍は彼女たちをナイトウィッチ(Night Witch)、「夜の魔女」と呼んで恐れた。

戦果

連隊は24,000回出撃し、その総飛行時間は28,676時間、1191日間に上る。その間に彼女たちは17の幹線道路、46の弾薬庫、86の敵拠点と燃料タンク、9つの列車と2つの駅を破壊した。使用した爆弾の量は3000トンに上る。しかし、それと合わせて23機の機体が撃墜され、32人の隊員が死亡した。その中には創設を進言したマリーナ・ラスコーヴァも含まれており1943年1月に戦死している。エヴドキヤ少佐は終戦まで生き延び、少佐を含め23人の隊員にソ連英雄勲章が授与されている。

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