ベトナム戦争以来、北朝鮮がロシアに戦闘機パイロットを派遣

ベトナム戦争以来、北朝鮮がロシアに戦闘機パイロット派遣

韓国政府当局者は、北朝鮮が地上部隊の派遣より前の9月にロシア極東の都市ウラジオストクに戦闘機パイロットを派遣していたことを明らかにした。北朝鮮が海外に戦闘機パイロットを派遣するのはベトナム戦争時に北ベトナム軍に派遣された時以来になる。

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韓国国家情報院の情報によれば北朝鮮は10月8日から約1500人をロシア極東のウラジオストクに派兵しているが、韓国の政府当局者は、それよりも前の9月に北朝鮮がウラジオストクに戦闘機パイロットを派遣したと主張した。目的は北朝鮮が派兵を決めた特殊部隊1万2000人同様、ロシアのウクライナ侵略を支援するためと推測されている。北朝鮮が戦闘機パイロットを派遣するのは、ベトナム戦争時に北ベトナム軍を支援するために派遣した時以来になる。1965年、韓国が南ベトナムを支援するためベトナムに兵を派遣すると、その対抗に北朝鮮も1966年に北ベトナムの支援として軍を派遣。空軍派遣部隊「Z団」を送った。この時、三個飛行隊(30機)分、96名のパイロットを含む約400名の人員を送ったが、今回、ロシアに派遣された部隊規模は不明だ。

韓国はこれらの対抗として、ウクライナ人パイロットに向けたF-16戦闘機の操縦訓練を提供する検討を進めていると報道されている。ウクライナ人パイロットのF-16操縦訓練はアメリカ、デンマーク、ベルギー、オランダ、イギリスなどが参加しているが、育成が間に合っていない。

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北朝鮮空軍パイロットはロシアで何に乗るのか?

衛星画像を用いて分析。北朝鮮空軍は500機以上の戦闘機を保持している

気になるのが、北朝鮮のパイロットがロシア空軍に編入され、どの機体に乗るかだ。朝鮮人民空軍は500~900機の航空機を保有しているとされ、規模だけ見れば世界有数の空軍力を誇るが、その実態はほとんどが半世紀以上前の古い機体で稼働率は著しく低いと分析されている。もっとも古い機体がMiG-15になり、これは1947年に初飛行した機体で北朝鮮には1950年代に導入、朝鮮戦争で使用された機体だ。初飛行から70年以上が経ち、1万5000機生産された機体もほぼ全て退役している。現役で運用しているのは北朝鮮軍だけになり、現役の戦闘機としては世界で最も古いモデルだ。この他、Mig‐15とほぼ同時期に開発されたMig-17、及び、その中国版である瀋陽J-5、そして、1955年にソ連で就役したMiG-19、その中国版である瀋陽J-6も現役で稼働しているという情報もある。もちろん、これらの機体はロシアではとっくの昔に退役している。物持ちがいいロシア軍といえで、半世紀以上前の航空機に関しては稼働できるような状態で残っていない。

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北朝鮮空軍にある最も新しい機体がソ連製の1970年代に開発されたSu-25攻撃機とMig-29戦闘機になる。この2つの機体は今でもロシア空軍でも運用されており、ウクライナ戦争にも投入されている。北朝鮮はSu-25を34機、Mig-29を18機保有しているとされ、その内、3分の2の機体が稼働状態であるとされている。つまり、この2機のパイロットがロシアに派遣され、そのまま同じ機体に乗るのであれば、訓練期間は通常よりも大幅に短くて済む。ただ、燃料不足と航空機の老朽化への懸念から、北朝鮮空軍のパイロットは年間15~25時間しか飛行できていないとされ、訓練が不十分となっている。パイロット歴が長いベテランでも、総飛行時間はロシア空軍の新米パイロットとさほど変わらない可能性もあるが、ゼロから訓練するよりは圧倒的に訓練期間は短く済む。ベトナム戦争時、北ベトナム軍も保有するMig-17戦闘機のパイロットを送っているが、北ベトナム到着から戦線投入まで半年ほど空いており、乗り慣れた機体といえど、ロシア空軍の適用訓練も含め、6か月ほどの訓練は必要と思われる。

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Su-25はともかく、Mig-29はウクライナに投入されているロシア空軍機でほとんど見る事がないため、この2つの古い機体ではなく、Su-30、Su-34、Su-35といった比較的新しい機体の訓練をうけるのではないかとも言われている。これらは今のロシア空軍の主力戦闘機になり、ウクライナ戦線にも主力機として投入されている。これらは1990代後半以降に開発された近代的な機体で、Su-30、Su-34については近代化改修が行われている。北朝鮮パイロットにとってはガラケーからスマホに置き換わるみたいなもので、この場合、訓練期間は長くなる可能性がある。そして、これは北朝鮮空軍パイロットのウクライナでの戦闘参加だけではなく、ロシアが北朝鮮に新鋭戦闘機を供給する布石とも言われている。北朝鮮はSu-25、Mig-29の取得以降、新しい機体を手に入れられていない。空軍力においてはF-35などを保有する韓国に圧倒的に劣る。金正恩総書記は2023年9月にロシアを公式訪問した際、コムソモリスク・ナ・アムーレにあるユーリ・ガガーリン航空機工場を視察。第5世代ステルス戦闘機Su-57の生産ラインを視察している。北朝鮮がロシアへの軍事支援の見返りとして、最新鋭の戦闘機の供与を提示した可能性は否定できない。ロシアには現在、輸出用に生産したが引き取り手が見つからないSu-35戦闘機がある。

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