パトリオットミサイルが迎撃不可と言われたロシアの極超音速ミサイル「キンジャール」をウクライナで撃墜

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ウクライナは5月4日未明に迎撃不可と言われているロシアの極超音速ミサイル「Kh-47M2 キンジャール」を撃墜したと発表しました。当初、この撃墜には懐疑的な意見もありましたが、撃墜はアメリカから提供されたパトリオットミサイルによって行われており、アメリカ国防省内でもこの情報に高い信頼性を置いているとされています。

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CNNによれば、アメリカはウクライナがロシアの極超音速ミサイルの迎撃に米国製のパトリオット防空システムを使用して撃墜に成功したという主張について、その正確性に高い信頼を置いていると報道しています。パトリオットミサイルは弾道ミサイルの迎撃に成功した実績も持つ世界で最も信頼されている防空ミサイルシステムの一つです。しかし、空中発射される極超音速ミサイルの迎撃についてはまだ未実証であり、”理論上は可能”という形に留まっていました。今回、それを実戦で実証したことになり、米国防省はこれを大きな進展と捉えています。

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迎撃不可と言われていた極超音速ミサイル「キンジャール」

ロシアは極超音速兵器開発において世界をリードしており、2017年末に世界で初めて超極音速ミサイル「Kh-47M2 キンジャール」の運用を開始します。キンジャールは航空機搭載型の兵器で要撃・局地戦闘機であるMig-31や爆撃機Tu-22M3に搭載、空中から発射されます。一般的に極超音速兵器は音速の5倍、マッハ5以上の速度で飛ぶ飛翔体の事を指し、キンジャールの最大飛行速度はマッハ10~13とされ、航空機の飛行範囲も含んだ攻撃範囲は2000~3000km、核弾頭も搭載できます。ロシア軍は昨年3月にウクライナで初めてキンジャールを使用します。これは世界初めて実戦で極超音速ミサイルが使用されたケースとなります。

極超音速兵器は敵の防空網を突破するために開発された兵器であり、そのスピードは敵に十分な迎撃準備時間を取らせない上に迎撃ミサイルでも追いつくことができません。迎撃手段としては弾道を予測して、先の軌道上で迎撃する方法がありますが、NATOのミサイル防衛システムを突破して標的を攻撃するために開発されたキンジャールには軌道変更可能な操作機能があり、軌道を予測することが不可能です。つまり、従来の防空ミサイルシステムでは迎撃不可能とされていました。しかし、今回、そのNATOの防空システムであるパトリオットに撃墜されたという事であれば、ロシアの目論見は外れたことになります。

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ウクライナに提供されたパトリオットミサイル

US Army

今回、キンジャールを撃墜したパトリオットミサイルは標的を終末航行の軌道上で迎撃する防空ミサイルシステムで、射程は20~30kmしかありません。つまり、今回、地表の標的にぶつかる直前に撃墜したことになります。パトリオットミサイルにはPAC‐2とPAC-3の2つのモデルがあり、PAC-2は標的近くで爆発して、破片によって空中標的を撃墜します。しかし、破片では弾道ミサイルの弾頭まで破壊できないため、開発されたのがPAC-3です。PAC-3はミサイル迎撃を目的に開発された性能向上型で、ミサイルの弾頭を完全に破壊するために、爆発せずにミサイルに直撃して弾頭ごと破壊します。その他、探知、識別、補足、追尾といった性能も向上しています。ウクライナに提供されているのがPAC-2、PAC-3どちらのかは公式には明らかにされていませんが、キンジャールを撃墜したということであれば、PAC-3かもしれません。

今回のキンジャールの撃墜、ロシア側が終末軌道で軌道を変更しなかったことでパトリオットが軌道予測して撃墜できたのか、または公表されているスペック通りの性能が実際には無い可能性があります。昨年3月の攻撃ではロシアは地下にある弾薬庫を破壊したと発表しましたが、キンジャールは二度ともこれといった軍事目標がない農村部に落下しており、もしかするとまだ制御可能な精度を持っていないのでは?と推測されていました。一年が経過した現在も、性能の改善は見られないようです。

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Source

US officials are confident in Ukraine’s claim it used Patriot system to stop a hypersonic missile, source says (cnn.com)

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米国のパトリオットミサイルが迎撃不可と言われたロシアの極超音速ミサイル「キンジャール」を撃墜
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