パトリオットミサイルの在庫問題!年間生産量は500発

パトリオットミサイルの在庫問題!年間生産量は500発
🄫Lockheed Martin

ウクライナの首都キーウを襲うロシア軍のミサイルをことごとく撃破しているパトリオットミサイルですが、成果を上げる一方、消費が増える事で在庫の懸念が浮上しています。

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今月17日夜から18日未明に首都キーウを襲ったロシアのミサイル。計30発ものミサイルが飛来しましたが、キーウに配備されていてアメリカ製の防空ミサイルシステム「MIM-104 パトリオットPAC-3 MSE」を含む対空兵器群によって、29発を迎撃。また、ミサイル群の中には撃墜不可能と言われていたマッハ10以上の飛行速度をほこる極超音速ミサイル「キンジャール」6発も含まれていましたが、これは全てパトリオットが迎撃しました。パトリオットは強度の高い実戦でその性能を示しまたが、ここで、懸念が出てきているのがミサイルの在庫です。17日の攻撃の際はパトリオットは30発のミサイルを発射しましたが、実はこの数、年間生産量の6%に相当し、しかも、それを僅か2分間で消費しています。

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PAC-3 MSEの生産量は年間500発

ウクライナに配備されているパトリオットは”PAC-3 MSE”というモデルで、ミサイル迎撃を目的に開発された性能向上型のミサイルです。PAC-2までは標的近くで起爆して破片で飛行体を迎撃していましたが、それでは、弾道ミサイルの弾頭まで破壊できないため、「Hit to Kill」という”直撃破壊型”を採用して破壊力が上がっています。さらにMSEでは機動性と射程が向上しています。また、確実に標的を撃破するために、PAC-3では標的一つに対し、2つのミサイルを発射。17日の攻撃では30発のパトリオットミサイルを発射したので、つまり、15個の標的を迎撃したことになります。

最新のPAC-3 MSEミサイルの現在の年間生産量は500発です。つまり、ウクライナが17日に発射した30発というのは年間生産量の6%に相当します。5月に入ってパトリオットは少なくとも3回、ミサイル迎撃に使用されており、既に年間生産量の約10%、月産生産分の数を消費して可能性があります。つまり、ロシアからの攻撃が同様の頻度で続くと年間生産量を超える可能性があります。

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これまでもウクライナでは対戦車ミサイルのジャベリンや携行型防空ミサイルのスティンガー、155mm榴弾が生産量を大幅に上回るペースでされ、在庫の懸念が噴出したことがありましたが、米軍が何万、何十万という在庫を保有していたため、余裕がある内に量産体制を整えることができましたが、PAC-3 MSEの量産は2018年に始まり、500発というフルレート生産に入ったのは2019年と実は最近で、米軍の在庫までそこまで潤沢とはいえず、2022年末時点で1600発とされています。つまり、米軍在庫を回す余裕はありません。

さらに現在のPAC-3の生産のほとんどは日本や韓国といった同盟国への輸出のために生産されています。中国による侵攻の懸念がある台湾も採用しており、昨年2月には総額1億ドルにおよぶパトリオットの改良と維持を米国防省が承認するなど、台湾有事に備え、備蓄させておく必要があり、ウクライナのためだけに使用するわけにもいきません。また、パトリオットは非常に高価であり、ミサイルなしのモジュール1セットの価格が4億ドル(530億円)、ミサイル一発あたり410万ドル(5.3億円)にもなります。つまり、30発というと、2分間で150億円分を使用したわけです。F-35A戦闘機が余裕で買える値段です。これまで提供してきた弾薬と違い消費コストが格段に違います。防衛用の兵器であり、人命、拠点を守る上で出し惜しみはできませんが、生産数や在庫の面を考えるとドローンといった低コスト兵器の迎撃には使いづらいかもしれません。ただ、PAC-3 MSEは前モデルのPAC-2、PAC-3のミサイルも使用できるので、その在庫も使用するのであれば、直近の問題ではないでしょう。また、今年4月には米陸軍はロッキード・マーティン社とPAC-3ミサイルを生産する24億ドルの契約を締結、これにはウクライナ支援分も含まれており、増産が見込まれています。

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Source

Patriot to Ukraine: What Does It Mean? (csis.org)

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