ロシア国防省は12月14日、ウクライナでの”特別軍事作戦”に参加する前線の兵士の士気を鼓舞するために2つの 「前線創造旅団」 の創設を発表したとイギリス国防省が18日伝えました。
Latest Defence Intelligence update on the situation in Ukraine – 18 December 2022
— Ministry of Defence 🇬🇧 (@DefenceHQ) December 18, 2022
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ロシアメディアによれば「前線創造旅団」にはミュージシャンやオペラ歌手、俳優、サーカスのパフォーマーが含まれると報じられています。この旅団の兵士のためにロシア国防省は最近のキャンペーンで一般市民に軍に楽器を寄付するよう奨励しています。旅団は、ウラジーミル・プーチン大統領の動員令の下で動員された兵士と「自発的に兵役に入ったプロの芸術家」で構成されます。新しい部隊は、ウクライナでの「特別軍事作戦の参加者の間で高い道徳的、政治的、心理的状態」を維持する任務を負うだろうと、国防省は述べています。
音楽と兵士
多くの軍隊では軍楽や組織的な軍隊向け娯楽の歴史が長く、特に軍隊における音楽は、士気向上に貢献するとされています。古くから兵士は歌を歌い元気を出し、結束を強め、士気を向上させてきました。また戦闘に入る前に音楽を聞くことで、心理的に戦闘の準備ができると信じられています。そのような効果もあり、軍で歌は奨励され、戦時中には歌手やタレントが軍隊を慰問して、コンサートを開催するという行為は行われていました。日本でも太平洋戦争中に、米軍でもベトナム戦争やアフガニスタン、イラクで歌手や俳優が現地の部隊を慰問に訪れています。現在では娯楽の多様化、ネットにスマホ、タブレットといった電子デバイスの普及でその在り方は変りつつあります。
ロシアではソ連時代からイデオロギー的な政治教育の概念と強く結びつけてこれらの行為を行っており、ロシア軍内には200から300の軍楽隊が存在、軍事音楽トレーニングセンターや民間の音楽学校を出た卒業生で構成されています。彼らは主にパレードなど軍の行事や儀式など安全な地域で演奏しますが、今回、創設される「前線創造旅団」は戦線とあるように、前線に赴いて兵士を鼓舞します。
士気が低いロシア軍
ロシア軍の士気が低いことは当初から言われており、兵士の死傷率は高く、多くの兵士が装備を捨てて、逃亡、投降を繰り返しています。今回の前線創造旅団の創設はこの状況に業を煮やした軍上層部の苦肉の策と言えるでしょう。しかし、ロシア兵の士気が低いのは無能な現場指揮官に無謀な作戦、装備や食料の不足、そして、戦争目的が不明瞭な大儀無き戦いによるものとされて、軍の上層部は根本的な問題を認識していない、もしくは現在の苦境の原因を他に置き換えているのかもしれません。英国防省は旅団の創設が現在のロシア軍の問題を解決するものにはならないと述べています。
ロシア国防省は先日、2023年から徴兵期間を現在の1年から2年に延長することを発表しており、さらなる動員を計画しており、今後も士気が低い若い兵士を前線に投入し続けます。