ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相は、7月15日にロシアのロストフ・ナ・ドヌのヘリコプター製造工場を訪問した際に、この工場で作られたヘリコプターがシリアでの作戦に参加したことに触れ、ロシア連邦軍がこれまで同地域で320以上の兵器をテストしたと述べた。
2011年に始まったシリア紛争は元々は現政権のアサド政権の独裁に対し、国内の反政府組織が武装蜂起したことに端を発する。この混乱を好機と捉えたイスラム国が参戦し、シリア内戦は三つ巴となり、クルド人武装組織なども加わり混迷を極めた。アサド政権と友好的関係を築いていたロシアは政府軍への支援とイスラム国討伐を名目に2015年9月にシリア内戦に介入。これを受けてアサド政権軍の勢いは増し、国土の大部分を再度掌握している。しかし、この介入には別の目的もあったようで、ロシアは自国が開発した兵器の実戦テストの場としても活用していた。
最新武器の試験場
ロシアの最新主力戦車で2015年に初公開されT-14アルマータ。無人砲塔を備え、性能面では世界最強といわれているが未だ量産は始まっていない。同戦車が初めて実戦配備されたのはシリアになり、2020年4月頃にシリアで戦闘テストされたいう報道があり、2021年4月には米国の戦闘ヘリAH-64アパッチに破壊されたという報道もあった。ロシアはT-14のシリアでの配備を公式には発表していない。
2018年には無人戦闘車両の無人の「Uran-9(Uran-9)」を初めてシリアに配備した。対戦車ミサイル、30mm機関砲を備え、小型ロボットながら有人の戦闘装甲車と同じ攻撃力を有する。まだ試験運用中の段階でシリアに配備され、当時はまだ機能不全で割り当てられたミッションをこなすことはできなく、実戦投入は早すぎたとことを認めたが、シリアでの実戦テストの成果か、その後、改良が行われ、翌年、ロシア軍に正式配備されている。
ロシア軍の新主力小銃であるAK-12もシリア紛争で実戦テストされたものと推測される。AK-12の開発が始まったのは2011年になり、テストが完了したのは2017年。2018年末から特殊部隊(スペツナズ)向けに配備が始まり、2020年からロシア軍に始まったばかりの小銃になる。その時系列を考えるとシリアで実戦テストされていた可能性は大きく、スペツナズも展開している同地域でおそらく初の実戦デビューをしているだろう。
その他にも誘導弾、装甲車、火砲、軍事システムなど様々な兵器の実戦テストが行われた。シリア紛争はロシアにとって少ないリスクで実戦の中で兵器をテストできる実弾射撃訓練場として非常に重要な場所だ(ウクライナ東部も紛争地域だが、表向きはロシア正規軍は関与していないことになるので最新武器の供与はできない)。単純なテストだけでなく、実際の運用条件下での戦術、技術、手順を確認する絶好の機会でもあり、ロシア軍が戦闘経験を積むための貴重な場でもある。さらに武器貿易を推し進めるロシアにとって、兵器性能を立証、お披露目する場でもあり、マーケティングにおいても重要な場になる。
Source
https://www.dailysabah.com/world/syrian-crisis/russia-tested-over-320-weapons-in-syria-shoigu-says