ウクライナ侵攻に伴い経済制裁を受けるロシアは部品不足からミサイルや戦車など兵器の生産が停滞しつつあるとされ、それを補うためにイランやイラクといった中東から武器を密輸して、ウクライナ戦線に投入しているとされています。
ロシアは開戦以来、ウクライナで既に数千発のミサイルを消費、1000両近い戦車を失っていますが、経済制裁により、西側の部品が入ってこなくなっており、戦車やミサイルの生産に必要な部品が枯渇、喪失分を補うことができていない状態です。この状態が続けば、近い将来、兵器が枯渇するのではと言われています。それに対しウクライナは今のところ、西側から兵器が続々と届いています。そこでロシアは不足する兵器を少しでも補うためにイランとイラクの武器密輸ネットワークを使い、兵器を輸入しているとされています。
イギリスのガーディアンの報道によると、イランの支援を受けているイラクの民兵組織や地域情報機関のメンバーからの情報として、ロシアはウクライナでの戦争活動ためにイラクの武器密輸ネットワークの助けを借りてRPGやブラジル製のロケットランチャーなど軍事用のハードウェアを複数調達しているとされます。
イランのババール-373を調達か
سامانه موشکی باور 373 pic.twitter.com/dX2Fj42vQS
— MESHKAT (@projectmeshkat) May 30, 2021
更にイランからはイラン製の長距離防空ミサイルシステム「ババール-373(Bavar-373)」を受け取っているとされます。ババール373はもともとソ連製のS-300をベースに開発された防空ミサイルになり、2016年に発表、2020年から運用が始まった兵器とされます。ババール373で使用されているフェーズドアレイレーダーであるMeraj -4は距離320km、高度65kmの範囲を検知し、最大200個のターゲットを同時に追跡、6個の標的と同時交戦でき、最大200km、高度27kmの範囲で標的を撃墜します。これは本家のS-300より性能が高いとされ、イランはS-300の競合と謳っていました。
S-300、S-400、S-500などに代表されるように長距離防空ミサイルシステムはロシアの軍需産業の主要な輸出兵器であり、輸出することはあっても輸入することは基本ありませんでした。今回、S-300の競合である、ババール373を輸入したということであれば、ロシアは本当にミサイルが枯渇しかけているのかもしれません。ロシアとイランはシリアでの戦いで協力、イランが長らく国連安保理から武器禁輸措置を受ける中、ロシアはいち早く再開の支持を表明するなど、両国は同盟に近い関係であり、イラン側としてもロシアの頼みは断れない事情もあります。
これだけの武器なので密輸組織ではなく、テヘラン当局から秘密裏に提供されているとされます。イランとロシアはカスピ海を隔て隣接しており、水路から輸送が可能です。イランにとってもシリアよりも一段階強度が高いウクライナの戦場で性能を確認したいという思惑もあると思われます。
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