今年5月にドイツ・ベルリンで起きた金属工場の火災事故が、ロシアの工作員による放火であったとアメリカのウォール・ストリート・ジャーナル紙が報じた。
L’entreprise métallurgique Diehl Metall se trouve à Berlin. Elle est le maître d'œuvre du programme européen de production de ces armes et de leurs munitions.
— L'inconscient est un mauvais professeur. (@Fred27781163688) May 3, 2024
Des substances toxiques telles que l'acide sulfurique et le cyanure de cuivre étaient stockés à l'usine. pic.twitter.com/RjZW5DtILW
今年5月初旬、ベルリン南西部にある防衛機器メーカーDiehl(ディール)社の子会社Diehl Metallの金属工場で火災が発生した。工場内には硫酸とシアン化銅が保管されており、化学物質が引火すると有毒なシアン化水素が生成される可能性があったため、200人以上の消防士が出動し、消火にあたったが、炎は激しさを増し、黒煙が噴出し続け、工場周辺の学校は生徒を帰宅させ、商店は店を閉じ、住民は窓を閉めて家に留まるよう指示された。工場の防護壁は燃え、少なくとも4階が全焼した。同社の広報担当者によると、従業員は全員避難し、負傷者はおらず、有毒ガスも発生しなかった。
火災原因は不明で、捜査中だが、火災から一か月、ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、ディール・メタル工場の火災はロシアの工作員による放火だと報じた。23日の報道によれば、匿名の治安当局者の発言を引用する形で、NATOの諜報機関がロシアの関与を示す通信を傍受し、ドイツ当局に渡したと報じた。この件についてはドイツメディアのBildも報じている。ただ、傍受されたメッセージはドイツの裁判所で現状、証拠として認められおらず、ドイツ警察も捜査はまだ継続中であり、「現段階では技術的な欠陥が火災の原因であると推定される」と述べるに留まっており、ドイツ政府もロシアを非難するようなメッセージは発信していない。もし、ロシアの関与が決定的であれば、「NATO第5条」に抵触する恐れもあり、慎重になっているとも言われている。第5条では加盟国一か国でも攻撃を受けた場合、これをNATO加盟国全体への攻撃とみなして反撃などの対応をとる集団的自衛権の行使が規定されているためだ。
ディール・メタルはドイツがウクライナに供与しているミサイル防空システムIRIS-Tを製造しており、これを妨害するために、同工場が狙われたと見られている。しかし、ディール・メタルはドイツ国内に複数の工場を所有しており、放火された工場ではIRIS-Tの製造はしておらず、主に自動車や電気システムの部品を製造していた。
ロシアはウクライナを支援するNATO及びEU国内に複数の工作員を派遣、またはロシア支持者を勧誘し、様々な妨害、破壊工作を行っていると言われており、ウクライナ侵攻以降、ロシアが関与していると思われる破壊活動、放火未遂、サイバー攻撃、偽情報の流布などが度々発生している。今年4月にはウクライナと関係のあるロンドンの物流会社の倉庫が放火され、英国人2人が放火未遂容疑や、国会議員やシンクタンクを狙った悪質なサイバー活動に関してロシア諜報機関を支援したとして起訴され、ブルガリア人6人がロシアのためにイギリスで諜報活動を行ったなどで起訴されている。ドイツではロシア系ドイツ人2人が、重要なインフラや軍事基地に対する爆破や放火を計画したとして逮捕された。NATO加盟国は破壊活動やスパイ活動など、ロシアの敵対的な活動から自国を守るためにさまざまな措置を講じる予定だと声明を発している。