先日、ロシア連邦軍の情報機関である参謀本部情報総局(GRU)が2019年に、アフガニスタンの反政府勢力タリバンによる米兵殺害に懸賞金を出していたという報道が流れた。これを主導していたのが、GRUの暗殺部隊29155とされている。
29155とは
GRUとはロシア版CIAのような組織で諜報や工作といったスパイ活動を行っている。CIAと少し違うのは軍の傘下であること。CIA自体は軍事力は持っておらず、軍事力を伴う作戦は米軍の協力を得ることになるが、GRUには2万人以上の特殊部隊スペツナズ隊員を抱えており、強固な軍事力を持ったスパイ組織になる。そして、その中で海外での暗殺や欧米諸国を不安定にすることを目的としたスパイ活動を任されているのが29155部隊とされている。GRUの中でも極秘扱いになっており、存在を知らない隊員も多いとされ、独自の裁量で、ある程度の行動が認められているとされている。
元ロシアスパイの暗殺
29155は10年程前から活動しているとされているが、知られるようになったのは2019年とごく最近になる。そのきっかけは2018年3月にイギリス南部ソールズベリーでロシアGRUのスパイだったセルゲイ・スクリパリ元大佐と娘のユリアが有毒の神経剤「ノビチョク」による毒殺未遂事件だ。容疑者としてGRU職員の2人のロシア人が逮捕される。この事件をきっかけにGRUの関与と秘密部隊29155の存在が明るみになる。この失態によってかどうかは定かではないが、この件が明るみになったあと、当時のGRU長官イーゴリ・コロボフが不審死を遂げている。
関わったとされる事件
29155が関わったとされるのが2015年の東欧の小国モルドバの不安定化工作。同年4月にはブルガリアの武器商人エミリアン・ゲブレフと他2人を有機リン物質による中毒死を狙った暗殺事件を起こす。この暗殺はセルゲイの事件と同様に暗殺未遂で終わっており、3人は一命をとりとめ、3人のロシア人が起訴されている。
2016年にはモンテネグロでクーデター未遂事件を起こしている。NATOへの加盟を阻止するために首相ミロ・ジュカノヴィッチの暗殺も企てられたが、クーデターは失敗。2017年にモンテネグロはNATOに加盟している。もちろん、これらの事件に関してロシア当局は関与を否定している。
見てお分かりの通り任務の多く失敗に終わっている。失敗に終わったことは喜ばしいことだが、部隊としての実力についてはまだ不透明な部分が多い。
https://www.nytimes.com/2019/10/08/world/europe/unit-29155-russia-gru.html
https://www.theguardian.com/world/2020/feb/21/three-russian-men-charged-with-poisoning-bulgarian-arms-dealer-emilian-gebrev