ウクライナのゼレンスキー大統領は11日、ロシア軍が占領するザポリージャ原子力発電所の敷地内で火災を起こしたと公式Xで発表した。同原発は2022年3月4日からロシア軍によって占領されている。
Enerhodar. We have recorded from Nikopol that the Russian occupiers have started a fire on the territory of the Zaporizhzhia Nuclear Power Plant.
— Volodymyr Zelenskyy / Володимир Зеленський (@ZelenskyyUa) August 11, 2024
Currently, radiation levels are within norm. However, as long as the Russian terrorists maintain control over the nuclear plant, the… pic.twitter.com/TQUi3BJg4J
ゼレンスキー大統領は映像付きでザポリージャ原発の火災を報告した。映像は原発から7~8km離れたニコポリから撮影されたもので、冷却塔の中から黒煙が上がっているのが分かる。冷却塔の下では炎のような物も確認できる。ゼレンスキー氏によれば、周辺の放射線レベルは基準値内で、今のところ放射能が漏れたという報告はない。IAEAも今のところ安全に関わる影響はないと発表している。火災の原因は今の所不明だが、ロイター通信は、ウクライナの地元当局者の話として、ロシア軍が大量の自動車のタイヤに火をつけたと伝えている。だとすれば、ロシアによる意図的なもので何かしらのメッセージと推測される。ウクライナ軍は現在、ロシア領内のクルスク州とベルゴロド州の一部に侵攻しており、クルスク州ではロシアのガスパイプラインの重要施設を制圧。更にクルスク原子力発電所まで数十キロの場所まで迫っている。ロシアメディアは同原発内にミサイルの破片が着弾したと報道しているが、ウクライナが攻撃したという証拠はない。また周囲の変電所がドローンによって攻撃されクルスク原発があるクルチャトフへの電力供給が遮断されたと明らかにしている。ウクライナ軍諜報部は同原発の敷地がミサイルの保管場所として利用されていると報告しており、制圧を狙っていると推察されている。ロシア側は既に原発防衛の準備を進めており、ウクライナ側を牽制するためにザポリージャ原発で意図的に火災を起こした可能性も推察される。
ロシア側は火災の原因がウクライナ軍の砲撃によるものと発表しているが、ウクライナが自国内にある原発に直接的な攻撃を加える可能性は低い。
ザポリージャ原発はロシアによるウクライナ侵攻が始まってすぐに侵攻を受け、2022年3月4日にはロシア軍によって制圧され、人質となった。2023年5月時点で約2500人のロシア軍兵士が敷地内に駐留していることが確認されており、ロシア軍の駐屯基地としても機能している。原発という性質上、ウクライナ軍は容易に攻撃できないでいる。2023年7月にはロシア側が停止している4号機の原子炉を意図的に100度を上回る高温状態にするなど、これまでも度々、ウクライナへの脅しに利用している。