ロシアマネーでウクライナ軍向けの砲弾数十万発を購入

チェコのヤナ・チェルノホヴァ国防相は、EU諸国で凍結されたロシアの金融資産から得た収益によってウクライナに数十万発の砲弾が供与されることを明らかにした。

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チェコ当局は20日火曜、欧州連合(EU)内に保有する凍結されたロシア資産から得た利息の一部をウクライナ軍の弾薬購入に充てる計画を発表した。EUは、ウクライナへの全面侵攻を受けてロシアに課した制裁の一環として、ロシア中央銀行の資産約2000億ユーロを凍結した。今年は既に15億ユーロの利益が生まれており、本来ロシアのものであった資金でウクライナを迅速かつ効果的に支援するまたとない機会であり、そのほとんどはウクライナへの武器供給専用の中央基金に充てられている。ヤナ・チェルノホヴァ国防相は「数週間前、EUが凍結したロシア資産の収益をウクライナの弾薬購入に充てるよう打診した。EUはそれを決定した。これにより、ウクライナに切望されている大口径弾薬を何十万個も購入できる」と述べた。

チェコのペトル・パベル大統領は、今年2月のミュンヘン安全保障会議で、ウクライナ向けの弾薬をEU以外の国から購入する案を提案していた。チェコは155mm砲弾50万発と122mm砲弾30万発を確保している事を明らかにし、同盟国からの資金が確保されれば、数週間以内に発送できると述べていた。その結果、18カ国がこの取り組みに参加。ウクライナ軍は6月に最初の砲弾を受領し、その後も毎月5万~10万発ずつ継続的に供給されている。チェコは7~8月には約10万発の砲弾をウクライナに輸送する取り組みを主導したが、ロシア資金によって砲弾の購入が決定した事で、9月以降、ウクライナへの砲弾供与は更に加速する見込みだ。西側の155mm砲弾の生産数は年内に130万発を予定しており、来年にはウクライナなど複数の砲弾工場が稼働を開始する予定だ。資金も確保できたことで、今後、安定的にウクライナに砲弾が供与されることになる。

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ロシアの凍結資産の活用

ロシアの金融資産は今後、ウクライナの重要な軍事・復興資金になる見込みだ。ウクライナ戦争の勃発を受けて、G7諸国とEU、オーストラリアはともに、ロシア中央銀行の資産2800億ドル、日本円で40兆円相当を凍結した。日本は2022年3月1日にロシア中央銀行が日本国内に持つ資産を凍結すると発表しており、3兆8000億円を凍結している。

凍結された資産2800億ドルの内2100億ドルがEU内にあり、これらの資金の大半はベルギーの預金機関ユーロクリアが保有しており、同社は2023年に44億ユーロの純利益を報告し、今年第1四半期にはさらに16億ユーロの利益を報告した。得た資金を再投資することで得た利益を活用する協定を正式に採択しており、EUとの合意に基づき、これらの利益のうち27億~33億ドル、日本円5000億円前後が毎年ウクライナに送金される。最初の支払いは今年7月に行われ、その内90%は武器と軍事装備に充てられ、今回の砲弾購入費用もこの資金から出る事になる。残り10%はウクライナ復興予算に当てられる。

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ちなみにアメリカでは凍結したロシア資産自体をウクライナ支援に利用してもよい法律が成立しているが、国際法的に問題があるのと、諸外国が海外に金融資産を持つ事を控えるとして、実施していない。アメリカはウクライナへの最大支援国であり、米国だけでこれまで540億ドルを支援している。

今年6月に開催されたG7サミットではロシアの凍結資産を利用して、年末までに500億ドル、日本円で約7兆円相当をウクライナに支援する枠組みで各国が合意している。ロシアによる侵攻が始まって以降、ウクライナには国際社会から1000億ドル以上が支援されているが、長引く戦争で各国では支援疲れが指摘されている。ロシアの凍結資産を利用する事で各国の負担を軽減する事ができる。世界銀行はウクライナ復興に今後10年間で4860億ドルが必要と見積もっている。西側はこの資金の大半をロシアに賠償させたいと考えており、その為にはウクライナにとって有利な条件で停戦する必要がある。

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