ウクライナ海軍はクリミア半島のセヴァストポリ港を攻撃し、同港に停泊していたロシア海軍のサルベージ船Kommuna(コムーナ)を大破させた事を発表しました。コムーナは現在、運用中の軍艦としては世界最古の船になります。
💥 Russian Black Sea Fleet submarine salvage ship Kommuna struck in Sevastopol, occupied Crimea, apparently by a Ukrainian Neptune anti-ship cruise missile. pic.twitter.com/UozohKohgK
— Igor Sushko (@igorsushko) April 21, 2024
ウクライナ海軍のドミトロ・プレテンチュク報道官は4月21日、海軍がロシアの占領下にあるクリミアのセヴァストポリ港を攻撃した事を発表、その結果、同港にあった潜水艦救難艦/サルベージ船「コムーナ」の損傷を確認したと発表しました。船の損傷の程度は不明ですが、初期の報告では、船が任務を遂行できる状態ではなく、大破したとウクライナメディアは報じています。SNSでは同港で火災が発生し、コムーナが炎上しているとされる映像が拡散されていますが、コムーナの損害を明確に示す動画や画像は今の所確認できていません。
クリミアのロシア政府の代理人ミハイル・ラズヴォジャエフ知事は、セヴァストポリが対艦ミサイルの攻撃を受けたと述べており、攻撃はウクライナ軍の国産対艦ミサイルネプチューンによって行われました。
コムーナはロシア海軍下で運用される船としては最古の船になり、ロシア帝国時代の船として残る唯一の船です。また、訓練船などを除いて、前線で就役する軍用艦としても世界最古になります。船はVolkhov(ヴァルホフ)という名で1912年11月12日に起工され、1913年11月17日に進水、1915年7月14日にバルト海艦隊に就役します。この時代は日本の大正時代にあたり、同時期に日本で建造、就役した軍艦というと金剛型戦艦になります。コムーナは今年で就役してから109年目を迎えており、通常であればとっくに退役、記念艦として飾られるレベルの船です。
Kommuna(コムーナ)
コムーナは潜水艦救難船、サルベージ船、そして潜水母艦として海上で潜水艦への補給や修理を行う船として建造されました。1917年にはオーランド諸島で沈んだAG-15潜水艦を引き揚げ、第一次世界大戦時にはイギリスの潜水艦を引き揚げ、イギリスは謝意を伝えています。その後、ソ連時代の1922年に現在のKommunaに改名します。第二次大戦時には沈んだ多くの残骸を引き揚げています。1967年から今の黒海艦隊の所属になり、潜水艇を運用するための回収が施されました。1977年には水深1700mに墜落した当時の最新鋭機Su-24攻撃機の引き揚げに参加します。最近では2018年に近代化改修を受け、深海潜水艇AS-28を搭載しています。
ウクライナ侵攻においては、2022年4月にウクライナ軍のミサイル攻撃によって黒海で沈没した当時の黒海艦隊旗艦でミサイル巡洋艦「モスクワ」を回収する8隻の救助部隊の一員として参加しています。モスクワが沈んだ海域の水深は最大100mと浅い水域でしたが、全長96m、排水量3,100トンのコムーナに対し、モスクワは全長186m、排水量12000トンと大きすぎるため、船体の回収は不可能で軍事機密と遺体の回収のみが行われました。2024年2月に自爆無人艇の攻撃によって沈没したロプーチャ級大型揚陸艦「シーザー・クニコフ」の回収にも参加したとされています。
コムーナの損失は船舶が沈没、機体が黒海海上に墜落しても回収できなくなるので、ロシア軍に与える影響は大きいと思われます。