イギリス国防省の諜報機関は13日、ウクライナ北東部のハリキウでのロシア軍の大敗北は同軍のエリート戦車部隊である「第一親衛戦車軍」にも大打撃を与えており、再編するには数年かかると言う分析結果を公表した。
戦車戦で敗退
Latest Defence Intelligence update on the situation in Ukraine – 13 September 2022
— Ministry of Defence 🇬🇧 (@DefenceHQ) September 13, 2022
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ウクライナ北東部ハリキウで敗北を喫したロシア軍。撤退する部隊の中にはロシア軍のエリート戦車部隊である西部軍管区「第一親衛戦車軍」もいた。英諜報機関はハリキウでのウクライナ軍の攻勢によって同部隊が相当数の犠牲を被ったと分析している。同軍の中核を成す第4親衛戦車師団はウクライナの第4戦車旅団のT-72、T-64戦車と激突。100時間に及ぶ戦いの結果、同師団は100両の戦車を喪失したとされる。第4親衛戦車師団には180両ほどのT-80U戦車が配備されていたが、今回の敗退の結果も含め、これまでに少なくとも約半数の戦力を失ったとされている。また、喪失戦車の多くは無傷でウクライナ軍の手に渡っている。ウクライナ軍は難なくして戦車部隊を増強できたわけだ。第一親衛戦車軍はこの戦闘の前に砲兵部隊など一部の部隊を南部へルソンの支援に割かれていたのと、航空支援を受けれなかったのが敗因とされている。第4親衛戦車師団は戦闘不可能なほどに弱体化しており、中核を成す戦車師団が戦闘不能ということはイコール「第一親衛戦車軍」の戦車親衛軍としての機能不全を意味する。
モスクワを護るエリート部隊
英諜報機関によれば西部軍管区「第一親衛戦車軍」はロシアの首都モスクワの防衛を任せられており、NATOと戦争が勃発した場合、地上反撃の主導を成す部隊で、まさにロシア陸軍の精鋭が集まったエリート戦車部隊の一つだ。その歴史は古く、第二次大戦下の1942年7月のスターリングランド攻防戦で「第1戦車軍」として編成。熾烈を極めた攻防戦で大打撃を受け、一度は解散するも翌年1月に再編される。その後は東部戦線の主要な戦いに参加。127の勲章が授与され、117人がソ連邦英雄の称号を与えられるなど、ソ連軍の中で最も勲章が多い部隊になる。しかし、その後、1999年に解散している。15年間の休止の後、陸軍は2014年11月に再編を行い「第一親衛戦車軍」として復活。西部軍管区に編入される。モスクワに最も近い場所に駐屯する部隊であり、人員は選りすぐりの者が選ばれた。
ウクライナ侵攻では侵攻開始と共に始まったキーウ北部での”チェルニーヒウ包囲戦”に第4親衛戦車師団と同じ親衛軍の中核である「第2警備モーターライフル師団」が参加。しかし、3週間の戦闘でチェルニーヒウを落とすことはできず、4月4日に撤退。ウクライナの諜報機関はこの戦闘で第1親衛戦車軍は409名(戦死61名、戦傷209名、行方不明44名、降伏96名)と軍事装備308ユニットを失ったと報告している。
その後はロシア軍が占領した東部の交通の要衝イジュームに移動し、ここを拠点に東部のセヴェルドネツクやリシチャンスクに進軍。ロシア軍による作戦第二段階の主要目標であった東部ルハンシク州の制圧に貢献していた。しかし、今回のハリキウでの戦いで第一親衛戦車軍は大打撃を受けることに。失った戦力を回復し、再編するには数年かかると見込まれている。
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