ロシアが開発したVA-111 hkval(シクヴァル)魚雷はソビエト時代に開発された魚雷で水中を最高時速370km/hで進む世界最速の魚雷です。潜水艦や艦船は魚雷に気付いても回避、反撃する間もなく、撃沈されます。
スーパーキャビテーション魚雷
シクヴァルの存在が明らかになったのは冷戦が終わった1990年代半ばになりますが、開発は1960年代から始まっており、1970年代には既にソ連軍で運用されていたされています。シクヴァルはソ連時代に開発された革新的兵器の一つで533mmの魚雷は最高時速200ノット(370km/h)という驚異的なスピードを実現しています。米海軍のバージニア級原子力潜水艦の水中での最高速度が34ノット(63km/h)、米海軍の主要魚雷であるMk48魚雷のスピードが公式情報で28ノット(実際は190km/h近いと言われている)なので、シクヴァルのスピードがどれだけ驚異的なのかが分かると思います。これを実現しているのが、搭載されているロケットエンジン、そして、スーパーキャビテーションという物理現象を利用した技術です。
スーパーキャビテーションとは簡単に言うと水中で気泡を発生させて、物体覆うことで水の摩擦抗力を減らすことです。シクヴァルの先端にはスーパーキャビテーション発生装置が装着されており、これにより、水の抵抗を最大60~70%削減、驚異的なスピードを実現しています。しかし、有効射程は最大15kmと他の魚雷と比べると短くなっています。
機動性が悪く騒音がひどい
しかし、ロケットエンジンと気泡の発生は多くの騒音を発生させます。そのため、魚雷を発射した時点で母艦と魚雷は敵に探知されます。更にその騒音で潜水艦の音響ソナーと魚雷に搭載されたパッシブソナー誘導システムが使用できなくなるため、標的が移動しても魚雷の正確な誘導ができないというデメリットが発生します。しかし、発射管から発射した時点で50ノット(92.6km/h)の初速、ロケット点火で即座に200ノットに達すスピードは敵が反応して回避、反撃する猶予を与えません。また、誘導に関しては、ターゲットに近づいた後にロケットエンジンを停止し、低速にすることで、ソナーを有効化し、補正させることも可能です。
高速のスーパーキャビテーション魚雷は米国やドイツ、イランなども開発していきましたが、実用運用かしているのはロシアだけで、ロシアは世界で唯一、スーパーキャビテーション魚雷を搭載した潜水艦を運用しています。