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ドイツ連邦海軍のフリゲート艦ヘッセンの飲料システムに何者かが廃油を混入させようとしていた事が判明した。ドイツ海軍の艦艇に対する破壊工作は直近で3件目になる。
ドイツメディアの報道によれば、ヴィルヘルムスハーフェンの海軍工廠にメンテナンスのために停泊していたザクセン級フリゲート艦ヘッセン(Hessen, F221)。メンテナンス中に飲料水システムを洗浄する際、数十リットルの使用済み油が明らかに意図的に飲料水システムに流し込まれる予定だったことが発見された。幸い、システム内部に混入する前に発見されたため、今のところ船の汚染はないとされる。もし、内部まで汚染が発生した場合、船上の乗組員の生活に必要なシステム全体を洗浄する必要があり、これには膨大な時間と労力を要することになり、ヘッセンはしばらく任務不可能な状態に陥るところだった。現地警察は海軍艦艇に関わる事件としてドイツ連邦軍と共同で捜査。連邦軍事防諜局(BAMAD)も捜査に関与しているという。
第二次大戦以来、初めて戦闘を経験した艦艇
ヘッセンはザクセン級フリゲート艦の3番艦で、満載排水量5,690t、全長143m、幅17.4m。「NAAWS」と呼ばれる防空戦闘システムを搭載し、SMART-L長距離監視レーダーと4基のAPAR多機能フェーズドアレイレーダーにより、北海全体の空域を監視でき、32セルのVLSには艦対空ミサイルのSM-2ブロックIIIAやESSMを搭載。ミニ・イージス艦と呼ばれ、ドイツ海軍の最も強力な艦艇の一つである。
ヘッセンは昨年、紅海でイエメンの反政府勢力フーシ派の攻撃から船舶を守る任務に参加し、27隻の商船を護衛し、4回の攻撃を撃退している。2024年2月27日には接近する2機の無人機を76mm速射砲を使用して最初の無人機を迎撃、2番目の無人機はRIM-116ローリングミサイルを使用して撃墜するなど非常に良い成果をあげた。しかし、その前日の2月26日に誤って友軍である米軍の無人機MQ-9リーパーを攻撃するという失態も犯している。しかも、SM-2を2発発射しながら外しており、おかげで撃墜とはならなかったが、これも問題とされている。それでもドイツ海軍にとっては第二次世界大戦終結後初の戦闘任務であり、男女乗組員240名に戦闘勲章が授与されるなど、貴重な戦闘経験を積んだ艦になる。
直近で相次ぐ破壊工作
ドイツ海軍ではここ最近、相次いで破壊工作が起きている。今年1月には、造船所で新しく完成したブラウンシュヴァイク級コルベット艦エムデンの進水前の最終検査中に推進システムに10kgを超える金属の削りくずが含まれているのを発見。初めて出航する前に発見されたが、もし気づかずに稼働させれば推進システムに重大な損傷を与え、就役が大幅に遅れる可能性があったという。また、数日前には海軍の機雷掃海艇が別の破壊工作を受けた疑いがあると報じられており、造船所に停泊中、正体不明の犯人がメンテナンス作業中に船内のケーブルハーネス数本を切断したとされる。現在、捜査中で犯人は捕まっていない。
ドイツや周辺のNATO加盟国では軍事施設や兵器工場などで不審な事故、軍事施設へのドローン侵入が近年多発しており、ドイツの治安当局はスパイ活動や破壊活動の危険性が高まっていると警告している。これらはロシアによるものとされている。