現代の戦争は情報戦であり、敵を検知するレーダーの性能は最重要事項の一つになる。太平洋戦争で日本が負けた要因の一つがレーダーを軽んじ、開発が遅れたことが原因でもある。レーダーは探知距離が広ければ広いほど、いち早く敵の動きをキャッチすることができ対処できる。その距離は探知能力が優れているイージス艦で500㎞、航空自衛隊のE-767早期警戒機で320㎞になる。しかし、これを大幅に凌ぐ、探知距離4,000㎞を世界最大のレーダーがある。それがSBX(Sea-based X-band Radar)だ。
ミサイル防衛用レーダー
SBXは米軍が開発、2006年から配備するミサイル防衛用のレーダーになり、弾道ミサイル防衛システム(BMDS)の一部である。弾道ミサイルを広範囲にわたって探知、検出し、デコイや破片からも区別して正確に追跡するBMDSの要になる。
SBXのレーダーは、大型の真っ白なドームの中に設置されており、約45,000個の送受信モジュールがレーダービームを形成しており、世界最大かつ最も洗練されたフェーズドアレイXバンドレーダーだ。レーダービームは、野球ボールほどの大きさの物体を、最大2,500マイル(4,000㎞)離れた地点から探知できる。精度を問わなければ最大探知距離は6,000㎞以上といわれている。これは日本とハワイ間(6,661㎞)の距離に匹敵する広さである。
海上を移動する巨大レーダー
SBXはノルウェーが油田採掘場して使用していたCS-50ツインハル油田プラットフォームに構築されている。このプラットフォームは米国では珍しいロシア製だ。サイズは全長116m、全幅73mと巨大ながら半潜水型で洋上に浮かぶ形になり、足元にある船で自走航行し、洋上であればどこでも配備できる。その巨体故、速度は遅く、僅か8ノット(15㎞)しかでない。そのため、長距離の移動は牽引、もしくは運搬船に搭載して移動する。このようなレーダーは世界唯一だ。
SBXプラットフォームには約85人の乗員がおり、橋、制御室、居住区、保管エリア、発電エリア、ヘリポートが用意されている。補給なしで60日間任務を維持でき、補給を受ければ1年以上、海上で任務を遂行できる。
日本近海に配備されているかも
主な配備エリアは太平洋になり、アラスカ、ハワイ近海に配備されることが多い。パナマ運河を通行することはできないため、大西洋に配備されることは無いと考えられる。現在は主に北朝鮮の弾道ミサイルの監視任務にあたっている。正確な位置情報はもちろん開示されていないが、北朝鮮全土をレーダー範囲内に捉える事を考えると日本近海に配備されている可能性は高い。