インド国防省は2019年末から調達を始めたアメリカのSIG Sauer社製のSIG716 7.62mm自動小銃について、不具合が発生するため、9,000万ドル追加注文の計画の中止を決定しました。インド軍はこれまで72,400挺のSIG716を受け取っています。
SIG716は現在、アメリカで最も成功している銃器メーカーSIG Sauer社の製品で2020年にアメリカの銃専門誌Ballisticの読者間投票で最高のAR系7.62mmライフルに選ばれるなど評価の高い銃です。しかし、インドメディアのWireの報道によれば、インド軍内ではしばしば、弾詰まりやバレルの膨張などにより、動作不能になる不具合が発生。更に反動が強く、これはAK47のバリアントでSIG716よりも口径の小さいインド国産小銃INSAS 5.56×45mmライフルよりも大きとされます。これを制御するためにインド軍は木製フォアグリップを製造し、バレル下部に装着、バイポッドも追加装備しているそうです。これらの品質にインド国防省は不満を持っており追加調達を取りやめました。
国産弾薬で不具合発生
しかし、これ一概にSIG716の品質が悪いとは言い切れない理由があります。弾薬は当初、SIG社から購入していましたが、価格が高いため数量限定で、その後は国産に切り替わりました。前述した不具合はインド国産の弾薬で発生しているようで、SIG社製の弾薬と比べると若干威力が高いようです。インドとしては、これまで国産の弾薬でINSASやSIG716と同じく新たに調達したロシアのAK-203が動作しているので、SIG716に不満があるのかもしれません。しかし、タフなAK系ライフルに対し、繊細なAR系ライフルのSIG716とでは弾薬の小さな差異が影響するのかもしれません。
AK‐203が77万挺の調達(輸入は10万挺で残りは国内生産)を予定しているの対し、SIG716は7万挺に留まっています。理由はAK-203と比べ高価なためです。しかも、調達価格を抑えるためにレッドドットサイトの調達を取りやめています。Wireは、軍高官の言葉として、「これらの購入は上級軍人を長とする権限を与えられた国防省委員会によって処理された。大量のコストをかけて調達された新しい兵器システムが、完全運用される前に改良される必要があったことは弁解の余地がない。」と伝えています。
SIG716はマークスマンライフルに分類される高精度、700mの射程を有するライフルになり、パキスタンや中国と領有権を争うカシミールの部隊に優先的に配備されました。この地は度々、武力衝突やテロが起きており、銃の不具合や機器の不足は致命的な問題をもたらす懸念があります。
SIG716とは
SIG Sauer社が開発製造するAR系ライフルでM4ライフルベースの5.56×45mmNATO仕様のSig516を7.62x51mm NATO仕様にチャンバー化し、マークスマンライフルとしての仕様を目的に設計されたライフルです。M4ベースですが、ショートストロークピストン、クローズドボルトを採用し、精度、耐久性を向上させています。2020年にはアメリカの銃専門誌Ballisticの読者間投票で最高のAR系7.62mmライフルに選ばれています。
インド国防省はSIG716を国産主力小銃INSASに代わる小銃として採用を決定。2019年に1万挺、その後、6万挺が追加され、計72,400挺がインド軍に納入。これらは陸軍に66,400挺、空軍4,000挺、海軍のガルド特殊部隊に2,000挺が配備されています。
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