ロシアが中国に対し、軍事支援を求めていることが報じられた。この要請に対し、中国は前向きに検討しているとも報じられている。気になるのはその中身だ。ロシアは中国にどういった軍事支援を求めているのだろう。イギリスのファイナンシャルタイムズとCNNによれば、ロシアは中国に6つの軍事支援を求めていると報じている。
地対空兵器
まず、一つ目が地対空兵器だ。ロシアは侵攻当初に制空権を掌握したと発表したが、未だに制空権を取れていない。ウクライナ空軍は生きており、ウクライナ国防省の発表によればウクライナ空軍は未だ70機以上の航空機を保有している。さらにトルコ製の攻撃ドローン「バイラクタルTB2」が大きな戦果を挙げており、ロシアの自走対空兵器も大きな被害を受けている。おそらく、各部隊に随伴する防空兵器が足りていないと思われる。中国人民解放軍にはロシア製防空ミサイルシステムの9K330TorがHQ-17(紅旗17)という名で、9K37BukがSA-11导弹という名で配備されており、これであれば直ぐに配備が可能だ。
ドローン
ロシアは軍事ドローンの先進国で、シリアでも活用していたが、これまで目立った戦果の情報はない。ウクライナの発表によれば80機以上の航空機を撃墜しているの対し、ドローンの撃墜は僅か9機だ。損害が多いわけではないので、数が足りないというわけではなく、技術的な問題と思われる。ロシアの軍用ドローンメーカーであるKronshtadt Groupがサイバー攻撃を受けており、その影響。若しくは通信システムが脆弱、またはウクライナ軍の電子戦が優秀で妨害されているのではという情報もある。電子戦兵器を持たないシリアでは使えたがNATOの支援も受けるウクライナ正規軍には通用しなかった可能性が高い。中国は民生品も含めた世界最大のドローン大国ではあるが、中国の軍用ドローンも正規軍を相手にした実戦経験は無いので使えるかは不透明だ。
インテリジェンス機器
偵察、諜報といった分野は得意と思っていたロシアだが、侵攻前からウクライナの抵抗を見誤る致命的なミスを犯した。むしろ諜報においてはウクライナの方が一枚上手で情報戦に関してはウクライナが勝っている。ロシアの前線部隊は十分な通信機器さえも与えられていないようで、通信を妨害、傍受されている。中国に求めているのは軍用の通信機器と思われる。
ロシア軍は暗号化されていない民間用の無線機や携帯電話を使用して通信を行っており、ウクライナ軍はその脆弱な通信を妨害、または傍受しています。民生品を使う前線部隊Окупанти користуються звичай[…]
装甲車
#Ukraine: A BMD-2, BTR-MDM “Rakushka” and a R-149MA1 unified command and staff vehicle were damaged/captured by the Ukrainian army in the vicinity of #Mykolaiv. pic.twitter.com/LZtXruPKAu
— 🇺🇦 Ukraine Weapons Tracker (@UAWeapons) March 15, 2022
ウクライナの発表によれば3月15日までロシア軍は1200両以上の戦闘装甲車を失っている。しかし、GlobalFirepowerの調べではロシア軍は3万両以上の戦闘装甲車を保有しており、総数からしたら、その損失は微々たるもののはず。しかし、1.2万両ある戦車のうち稼働状態なのは20%とされ、保有する車両全てが稼働状態にあるわけではない。戦車と同じ割合の稼働と考えると、約6000両になる。だとすると20%の車両を失ったことになる。保管状態にあるものの多くは旧式モデルと思われ、戦場に再配備するには近代化、オーバーホールを行う必要があり、時間がかかる。中国はソ連製のBMD-3やBMP-1のコピー86式歩兵戦闘車、BMP-3をベースに開発した04式歩兵戦闘車を製造している。
支援車両
⭕️Russian railways: Transportation of civilian trucks (with mark Z) on March 5, 2022 . Presumably, the location is between Voronezh- Belgorod
— 🅻-🆃🅴🅰🅼 (@L_Team10) March 6, 2022
👉The train is loaded with nunber of busses, vans, fuel trucks+ 1 Tigr
👉 The 📹 Indicates requisition of civilian vehicles by #Russia pic.twitter.com/4BDrZVGp3N
装甲車とは別に兵站など後方支援に使用する車両の提供も求めている。ウクライナ軍はロシアの軍用トラックの損失は発表していないが、これらの車両もだいぶ破壊、放棄されており、民間用トラックも多数ウクライナに投入されている。
戦闘糧食 MRE
Why are they looting a food shop? Because, #Putin cares about his soldiers this way: #Ukraine – 20220228 – unknown place – Ukrainian troops find at unknown time Russian food ration expired 7 years ago pic.twitter.com/y8y5CxWXbj
— glosm eusec (@glosmeusec) March 1, 2022
これまでの5つはファイナンシャルタイムスが報じたものだが、CNNはロシアが中国に保存がきく、戦闘糧食を求めていると報じている。とにかく兵站が滞っているロシア。食料についても困窮している部隊がおり、食料品の略奪も起きている。軍から供給される食糧には上の動画にあるように賞味期限が切れているものもあるらしい。「腹が減っては戦はできぬ」とはよく言うが、空腹は兵士の士気を大きく下げる。戦闘糧食でさえも十分な用意がないというのは、ロシア軍の準備不足、兵站の脆弱さがうかがえる。また、腐敗が横行するロシア軍内では前から装備品の転売が横行しており、ebayなどには前からロシア軍の戦闘糧食が数多く転売されていた。食文化が大きく異なる中国の戦闘糧食はロシア兵の口に合うだろうか。
Source
https://www.ft.com/content/52ea7aab-f8d1-46b6-9d66-18545c5ef9b9
https://edition.cnn.com/2022/03/14/politics/us-china-russia-ukraine/index.html