SMX31E|フランスが計画する近未来ステルス潜水艦

SMX31E|フランスが計画する近未来ステルス潜水艦
Photo by Naval Group

SMX31E」は2018年にフランスのNaval Groupが発表した近未来の軍用潜水艦「SMX31」の発展型です。10月27日のEuronaval Onlineで更に詳細が明らかになりました。SMX31は電動式で40日間海中に留まることができ、しかもステルス性で発見が非常に困難な潜水艦です。

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Navalが計画する近未来型潜水艦

地表の70%は海であり、海に面する海洋国家にとって、海上、海中で作戦行動する海軍力は非常に重要です。フランスは世界6位の戦力を誇る海軍を持っています。空母「シャルル・ド・ゴール」は米軍以外では唯一の原子力潜水艦です。潜水艦においても核攻撃可能なル・トリオンファン級など複数の原子力潜水艦を持っています。これら一手に引き受けているのがフランスの造船企業で海軍艦艇を建造する”Naval Group(ネーバル)”です。仏政府が株式の75%を保有するいわば国営企業でもあります。2016年にオーストラリア海軍の潜水艦の競争入札では、潜水艦製造の評価が高い日本、ドイツを抑えて受注するなど、ネーバルは世界でも有数の軍艦造船企業です。そのナバルが新しい潜水艦のコンセプトとして発表したのが「SMX31E」です。

デザイン・設計

SMX31E|フランスが計画する近未来ステルス潜水艦
Photo by Naval Group

潜水艦としては斬新的なデザイン、設計になっており、まず潜水艦の特徴である胴体がそびえ立つ上の部分のセイルがありません。側面には水の抵抗を減らすためのフェアリングが付いていますが、潜水艦の胴体非常に滑らかでセイルがないことで一切の凹凸物がありません。更にはスクリューすらありません。流体力学と生物学的なデザインから”マッコウクジラ”、”ザトウクジラ”を思わせます。

僅か15名の乗員で運用

SMX31E|フランスが計画する近未来ステルス潜水艦
Photo by Naval Group

大きさは全長80m、幅10mと大きさは現在の攻撃型潜水艦の平均80~110mと比較しても、小さくはありません。排水量3200トンになり、サイズ的には海上自衛隊の「そうりゅう型潜水艦」とほぼ同等です。だが、これだけの大きさながら、SMX31Eの運用に必要な乗員は僅か15名だけです。そうりゅう型の65名と比較すると4分の1の人員で済みます。AIを搭載し、各種センサーによる探索検知をAIによって自動化、その他のシステムもほぼ自動化させることで実現させます。また電動式の完全自動設計になるため、メンテナンスも最小化され、海上に出ても、最低限の整備員で対応可能になります。

武装・ペイロード

SMX31E|フランスが計画する近未来ステルス潜水艦
Photo by Naval Group

SMX31Eには最大24発の巡航ミサイル、F21魚雷、対艦ミサイルが搭載できます。魚雷発射管は前方以外にも後方にもあるため、後方にいる敵に対して、艦首の向きを変えずに攻撃できます。この魚雷発射管は兵器の発射だけでなく、6台搭載可能な自律型潜水艇(UUV)の発射や回収にも使用されます。背面には大型のXLUUVを展開できる2つの大型モジュラーベイがあります。これらの水中ドローンは、まだ開発中です。特殊潜水士をサポートするためのエアロックを装備でき、水中特殊部隊を展開回収することもでき、これらは潜水艦の性能を大幅に向上させることができます。

動力

SMX31Eは非大気依存推進(AIP、Air-Independent Propulsion)と呼ばれる潜水艦を浮上させずに長期間の潜行を可能にする技術電動式であり、その動力は艦内の発電所とリチウムイオン電池になります。搭載される多数のリチウムイオン電池は潜水艦の総重量の重要な部分を占めています。電池は強固なボックスの内側と外側に配置されています。これは簡単に交換およびアップグレードできるようにするためです。これらのバッテリーは艦内のシステムにエネルギーを供給するだけでなく、2つの電気エンジンにもエネルギーを供給します。SMX31Eにより静かなウォータージェットによって推進します。

SMX31Eは5ノットの速度60日間、8ノットの速度で最大40日間潜航できます。同じリチウム電池を採用するそうりゅう型で最大潜航期間が2週間といわれており、この潜航期間は原子力潜水艦と遜色ありません。

ステルス性

船体は無響タイル(acoustic tiles)で覆われています。これはゴム製または合成ポリマーのタイルで敵のアクティブソナーを吸収し、反響を抑えて探知を防ぎます。その上、電気エンジンとウォータージェットの騒音レベルは非常に小さく音を探知するのも難しいでしょう。また、検知されてもその流体力学的な形状はクジラや大きな魚類を思わせます。

艦首と側面にソナーが収納され、その他各種センサーが搭載されています。また、独自の水中戦術ネットワークを持っており、水中ドローンはこれによって遠隔操作されます。

SMX31Eはまだコンセプトの段階ですが、今後10年で開発、その後10年で試験を行い、実際に配備されるのは2040年頃と想定されています。

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https://www.naval-group.com/en/naval-group-reveals-smx-31-e-its-2020-concept-ship-800

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