韓国政府当局匿名筋の情報として、北朝鮮がロシアのウクライナ侵攻を支援するために兵力1万2000人規模の軍隊を派兵する事を受けて、韓国政府は情報の収集と対抗策の策定を支援するため、ウクライナに監視団を派遣することを検討していると伝えられている。また、ウクライナ支援もこれまで行ってこなかった砲弾や兵器といった武器供与の検討も行っていると報じられている。
北朝鮮兵の能力を観察し、ウクライナ軍に助言
韓国メディアの報道によると、韓国政府当局匿名筋の情報として、政府は北朝鮮がロシアの侵略戦争を支援するため、1万2000人の派兵を決定、既にその一部がロシア入り、戦線近くに配備されている事を受けて、ウクライナに情報分析官からなる監視団を派遣する検討を進めている。目的は北朝鮮兵の動きを監視、観察し、彼らの現在の装備や戦術、その能力を分析することである。そして、ウクライナ軍に北朝鮮兵への対抗策を助言すること。また、北朝鮮兵が脱走、投降する事を踏まえ、捕虜になった際の通訳及び、尋問に協力し、情報を引き出すことが目的と推測されている。
ロシア支援のために派兵される朝鮮人民軍は特殊作戦軍傘下の第11軍団、通称「暴風軍団」と韓国国家情報院は報告している。特殊作戦軍傘下というように同軍団は特殊部隊になる。部隊の一部は韓国との軍事境界線である非武装地(DMZ)付近に常時配備されており、戦争が始まれば、真っ先に韓国に侵攻してくる。韓国にとっては最大20万人いるとされる北朝鮮の特殊部隊の現状の能力を知る機会になる。
武器支援を検討
韓国の国防調達法と外国貿易法は直接または第三者を通じて、戦争当事者にある国への武器の移転を禁止している。韓国はウクライナの支援国だが、この法律もあり、日本と同様、支援は非戦闘兵器に限られている。ただ、間接的な形での砲弾支援は行われており、韓国はウクライナ支援で在庫が減った米軍の砲弾備蓄を補うために155mm砲弾をアメリカに売却。これにより、アメリカは自国の在庫から更なるウクライナへの軍事支援が可能になっている。アメリカがウクライナに供与しているのはあくまで米軍の在庫で、韓国が供与した砲弾は米軍内で消費されるため、第三者を通じた武器供与に当たらない。韓国は現在、世界でも有数の武器輸出国だが、これまでウクライナに武器供与と軍事支援は行っていなかったわけだが、しかし、韓国は今回の北朝鮮のロシア派兵を受けて、ウクライナに武器を直接供与できるよう、この2つの法律を改正する必要があるかもしれないと報じられている。
このような動きは過去にもあった。それが今年6月にロシアのプーチン大統領が19年ぶりに北朝鮮を公式訪問し、金正恩総書記と会談した際だ。両首脳は、いずれか一方が他国から攻撃を受けた場合、「遅滞なく、保有するあらゆる手段で軍事的およびその他の支援を提供する」と明記された「包括的戦略パートナーシップ条約」に署名。北朝鮮とロシアとの関係は旧ソ連時代に戻り、軍事同盟に近い関係となった。これは朝鮮戦争を思い起こさせ、韓国と北朝鮮は休戦状態なだけであって、朝鮮戦争は終結していない。韓国はこれまで対露関係に配慮して、ウクライナに軍事支援を行っておらず、プーチン大統領もそれを評価するコメントをしていた。しかし、二度も梯子を外された形だ。韓国はソ連製のT-62、T-72、T-80戦車を50両、BMP-3歩兵戦闘車を70両ほど保有しており、軍事支援に踏み切れば、これらが供与されると言われている。また、F-16を運用する韓国空軍はウクライナ人パイロットへのF-16操縦訓練を検討しているとも報道されている。
親ロシア派のソーシャルメディアは21日、ウクライナ東部のドネツク州の重要な町ポクロフスク近くの鉱山近くの丘に北朝鮮とロシアの国旗が並んでいる光景を示唆する写真を投稿した。ここは今年9月にロシア軍が制圧したと主張した地域になり、激戦地東部の最前線だ。ここに既に北朝鮮兵が配備されているかは不明だが、ロシア軍は両国間の協力関係を強調。北朝鮮兵の前線投入を匂わせた形だ。韓国側にとって脅威なのが、北朝鮮兵が強度の高い戦場で実戦経験を積むことだ。電子戦にドローンの多用と戦争はここ数年で大きく変わった。更に火力や塹壕戦といった昔ながらの戦闘も行われており、これら現代戦の実戦を北朝鮮兵は経験することになる。そして、それを本国に還元する事は目に見えており、韓国にとっては大きな懸案事項だ。