韓国空軍は昨年、鷲に衝突して損傷したF-35Aステルス戦闘機の修理を諦め、同機を退役させることを決定した。
聯合ニュースなど韓国メディアの12月1日の報道によれば、大韓民国空軍(RoKAF)は、2022年1月にワシと衝突して大破したF-35AライトニングIIステルス戦闘機1機が修理費用過多のため退役を余儀なくされたことが分かった。
2022年1月4日、飛行訓練中だった韓国空軍のF-35Aは射撃演習場に侵入するために高度330mの低空を飛行中に鷲と衝突。鷲は左のエアインテーク(空気取り入れ口)にぶつかり、そのまま隔壁を突き破って兵器室に侵入、ランディングギア作動用の油圧ダクトと電源ケーブルを損傷、着陸装置の作動を妨害した上、アビオニクスにも不具合を生じさせた。パイロットはなんとか基地に戻るも、ランディングギアが作動しないため、燃料を空中投棄した上、胴体着陸を実施した。幸いパイロットに怪我はなかった。
当初、F-35Aの損傷は軽微で修理可能とされていたが、米軍と生産元のロッキード・マーティン社の協力も得て徹底的な検査が行われ、300カ所の損傷が判明、深刻さが明らかになり、高度なステルス戦闘機の修理には膨大な費用とスケジュールが必要であることが判明。韓国空軍は修理するか、退役させるかの判断に迫られることに。
その修理費用は1400億ウォン(約150億円)に上り、これは現在、1100億ウォン(約120億円)とされるF-35Aの新機体価格よりも高い。その上、修理には4年以上かかり、修理後の安全性検証手続きを踏むことも容易ではなく、事故機体ということもあり、安全性に懸念もある。その結果、修理を試みるよりも退役させることが良いと判断した。最終決定は韓国国防省の承認を得た上で行われる。
同機は2020年に韓国空軍に就役した機体になり、僅か3年で退役、実働期間はさらに短い。退役後は廃棄されずに、整備士の訓練や部品どりに使用される可能性がある。
韓国空軍は2023年1月末までに40機のF-35Aの配備を完了させたが、運用状態はあまりよくないとされる。本格運用を開始した2021年から2022年6月までの18カ月の間に、飛行不能状態(G-NORS)、特定任務不能状態(F-NORS)の判定を合わせて234回受けていたことが昨年判明。機体は納入されたばかりの最新機種であったため、これらの原因は整備上の問題が原因と分析されている。韓国空軍は2028年までに更に25機を追加配備する予定だ。
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