シリア反政府勢力はタダで戦車145両、戦闘車96両、航空機35機を手に入れた

シリア反政府勢力はタダで戦車145両、戦闘車96両、航空機35機を手に入れた

シリアの反政府勢力は僅か9日間の戦闘で北部の要衝アレッポ、そして、中部都市ハマーを制圧した。破竹の勢いで進撃する反政府派だが、日増しにその戦力は増大している。なぜなら敗走するアサド政府軍が大量の戦闘車両を放棄していっており、それを鹵獲していっているからだ。

sponser

11月27日に始まったシリア反政府勢力による大規模攻勢。僅か3日で北部の要衝で第二の都市であるアレッポを制圧。さらに、それから僅か5日後の12月5日には中部に位置する第4の都市ハマーを制圧した。次の標的となるのが、その南にあるシリア第三の都市ホムスになり、首都ダマスカスまで160kmの場所に位置する。今の勢いであれば、ここも僅か数日で陥落する恐れがある。なぜなら、反政府勢力はそれを可能とさせる戦力を整えつつあるからだ。

オープンソースのMintel Worldによれば、アサド政府軍は11月27日から12月5日までの9日間の間に少なくとも145両の戦車、96両の装甲・歩兵戦闘車、87門の砲兵システム、18基の防空システム、35機の航空機を失っている。しかも、これらの多くは無傷のまま、放棄されている。無論、反政府勢力はこれらを鹵獲し、戦力化している。

sponser

大量の戦闘車両を鹵獲

戦車の内訳でいうとT-55が64両、T-62が21両、T-72が51両、T-90が5両、そして、不明が5両だ。不明なものは完全に損傷した車両と思われる。特にT-72とT-90を失い、鹵獲されたのは痛いだろう。シリア陸軍は内戦前、1500両のT-72を保有。2011年に内戦が始まるとロシアから近代化モデルの数十両のT-72B3を受領。また対都市戦用に装甲を強化した改良型のT-72 Adraを開発している。しかし、内戦で半数以上を失った。残っているのは200両ほどとされている。もっとも痛いのはT-90だろう。シリア陸軍が保有する戦車では最も新しいモデルでロシアから2015年に30両、2017年に40両を受領している。この内、前の戦闘で少なくとも10両を失い、今回5両が反政府勢力に鹵獲された。

96両が破壊または鹵獲された装甲・歩兵戦闘車の内訳は以下だ。

87門の砲兵システムが下記になる。

反政府組織にはシリア軍を抜けた元軍人も多数おり、陸上兵器の運用は可能だ。実際、前の戦闘から反政府勢力はシリア軍から鹵獲した兵器を使用していた。

sponser

痛い航空戦力の損失

反政府勢力は35機の航空機をほぼ無傷で鹵獲している。内訳はチェコスロバキア製の軽攻撃機L-39 Albatrosが24機、ソ連製の戦闘機爆撃機Mig-23が9機、ソ連/ロシア製の汎用ヘリMi-8/17が1機、そして、イラン製の無人機Ababil-3が1機だ。ただ、地上兵器とは違い、航空機の運用は簡単ではなく、正規軍ではない反政府勢力に航空機を運用できる能力はなく、これらは戦力化できない。ただ、シリア政府軍から航空戦力を奪ったという結果は大きい。アサド政府軍の最大の強みは反政府勢力にはない航空戦力を有している事であり、制空権を握っている点だ。内戦初期、劣勢だったアサド政府軍だがロシア軍の協力も得て、反政府制圧地域に激しい無差別空爆を実施。17%まで減っていた支配地域を国土の3分の2まで奪還する事に成功したのは空軍のおかげだ。

sponser

今回の反政府勢力の大規模攻勢ではロシア軍が空爆で反撃したが、撃退、押し返す事ができなかった。また、今回、ハマーが制圧された事で、ロシア軍も使用していたハマー空軍基地をアサド政府軍は放棄。既に反政府勢力が制圧しており、無傷のMig-21戦闘機の鹵獲が確認されている。また、数百人のロシア兵がハマー市の西にあるスカイラビヤ基地から撤退。シリアにおけるロシア空軍機の主要拠点で、地中海沿岸部に位置するフメイミム空軍基地に移動している。ここには常時30機ほどのロシア空軍機が展開しているが、反政府勢力は基地から35kmの地点まで進軍しており、この基地の存続も危うい。アサド政府軍は虎の子の空軍も失いつつある。ロシア軍も反政府勢力の進撃に成すすべなしといった状況だ。ここのまま反政府勢力は年内に首都ダマスカスに達するかもしれない。

sponser
sponser
シリア反政府勢力はタダで戦車145両、戦闘車96両、航空機35機を手に入れた
フォローして最新情報をチェックしよう!