F-35を断られたタイ空軍はF-16の後継としてグリペンE/F戦闘機を購入する

F-35を断られたタイ空軍はF-16の後継としてグリペンE/F戦闘機を購入する
©Saab

タイ王国空軍(RTAF)は、老朽化し​​たF-16A/B戦闘機の後継機としてスウェーデン製のサーブJAS39グリペンE/F戦闘機を導入する決定を8月27日に発表した。正式契約はこれからで、納入時期や、契約額などは明らかにされていない。RTAFは、2022年1月からF-16に代わる次世代戦闘機の調達計画を開始していた。

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タイ空軍は声明で、「JAS39グリペンE/Fは軍事ドクトリンと空軍の戦略の要求を満たす能力がある」と述べ、決定するまでに10カ月を費やしたと発表している。候補にはF-16の最新モデルであるF-16ブロック70も上がっていたが、厳正な審査の上、グリペンE/Fに軍配が上がった。正式な調達機数はまだ明かされていないが、初期計画では12~14機のグリペンE/Fが納入される予定だという。納入は二回に分けて行われる。RTAFは1988年から2005年に掛けて計59機のF-16を調達しており、36機の単座型のF-16A、14機の複座型のF-16Bが現在も運用中であると考えられている。この内、1980年代に調達したF-16を2028年に退役させる予定であり、グリペンE/Fはその後継機になる。

グリペンを開発製造するスウェーデンのSaab(サーブ)社とRTAFの取引は以前からあり、RTAFは2011年2月にグリペンの前モデルであるグリペンC/Dを配備しており、現在、7機の単座型のグリペンC、4機の複座型のグリペンDを4機の計11機を保有、豊富な運用実績をもっている。2022年にはグリペンC/DをMS20型構成にアップグレードするプログラムを開始し、完了させている。これには、グリペンの空対地兵器の搭載数が拡張され、新しい空対空レーダーを導入するためのハードウェアとソフトウェアのアップグレードが含まれている。また、タイ空軍はグリペンの導入と同じタイミングでサーブ社製の2機のSAAB 340 AEW&C早期警戒機、2機の輸送機モデルのSAAB 340Bを配備するなど。タイ空軍はアジアでは珍しくスウェーデン製の航空機を揃えている。

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F-16の後継は本当はF-35Aにしたかったタイ空軍

タイは昨年、アメリカに第5世代ステルス戦闘機のF-35Aの購入を求めていた。しかし、アメリカは訓練と技術要件の問題を理由に、タイへの販売を拒否したとタイ空軍が2023年5月に発表している。F-35の販売には時間的制約、技術的要件、メンテナンスの互換性などの条件があり、米国はタイがその要件を満たせないと判断した事が表向きの理由だ。ただ、もう一つ考えられるのがタイと中国の接近だ。陸軍と海軍の装備は近年、中国兵器化しており、陸軍は近年、中国製の主力戦車VT-4、水陸両用戦闘車VN16を新たに調達。海軍は071ETドック型揚陸艦を調達するなど中国との結びつきを強くしている。また、政権も不安定で1932年の立憲革命以降、未遂も含めて19回のクーデターが発生。近年でも2006年と2014年に軍事クーデターが起き、軍事政権が樹立している。タイはアメリカにとって主要な非NATO同盟国で、毎年、共同軍事演習を行っているが、いつ中国よりの政権が樹立してもおかしくない政情にある。

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グリペンE/F

グリペンはスウェーデンの軍需企業サーブ社が開発製造するカナードとデルタ翼の組み合わせであるクロースカップルドデルタ形式を特徴とした第4世代戦闘機。1988年に初飛行、1996年にスウェーデン空軍で最初のモデル”グリペンA/B”の運用が始まっている。その後、電子機器をアップデートしたC/D、そして、最新のアビオニクス、エンジンを改修して、スーパークルーズを可能にした最新モデルE/Fが2018年に登場している。グリペンの最大の魅力は他の第4世代以上の戦闘機に比べてサイズが小さく低コスト、その上、性能が高いことだ。マッハ2の最高速度とスーパークルーズ能力、航続距離は2,500kmと能力は申し分ありません。しかも1機あたりのコスト4000~6000万ドルはF-35の約半分であり、1時間当たりの飛行コスト5,800ドルはF-35の7分の1しかない。そのため中堅国に人気でブラジル、タイ、南アフリカなどが主要な採用国になる。

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