銃火器メーカーの老舗”Colt”社の終焉

銃火器メーカーの老舗”コルト社”の終焉
2021 by Colt’s Manufacturing Company, LLC

チェコのCZ(チェスカー・ズブロヨフカ・ウヘルスキブロッド)社が米国の銃器メーカーの老舗Colt’s Holdings(コルト・ホールディングス)を買収したニュースは銃界隈を騒然とさせましたが、コルト社は前々から業績不振で2015年には破産申請するなど身売りの話は以前から上がっていました。一体、コルト社に何があったのでしょう?その歴史を振り返ります。

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リボルバーの基礎を築く

サミュエル・コルト
サミュエル・コルト

コルト社は1836年に陸軍大佐サミュエル・コルトによって創設されます。撃鉄を起こしてシリンダーを回転して次弾を装填するシリンダーの回転技術を確立し、シングルアクション機構を発明するなど特許を取得、リボルバー拳銃の礎を築きます。

最初の破産

ニュージャージー州パターソンに工場を建設し、1937年には最初の銃”コルト・リング・レバーライフル”、同年に”コルト・パターソン”を開発。コルトは陸軍、海兵隊に売り込むも、どちらも品質面に問題があり、採用には至ず、業績は悪化。そして、創設から僅か6年後の1842年に最初の破産を迎えます。

コルト・ウォーカーの発明

コルトは破産後、他の仕事に従事しますが、1846年、再度、銃の世界に戻ります。コルトは以前から自社の銃を使用し、テキサス・レンジャーといわれた米陸軍のサミュエル・ハミルトン・ウォーカー大尉の協力を得て、彼の助言をもとに改良した”コルトM1847”を開発、アメリカ政府に提案します。この時、アメリカとメキシコとの間で米墨戦争が勃発しており、コルトM1847はアメリカ政府から1000丁という大口の注文を受注します。最初に生産された2丁は早速、ウォーカー大尉に渡されますが、大尉はその翌朝に戦死。彼に敬意をこめてコルトM1847は”コルト・ウォーカー”と名付けられます。その後、コルトは数々の名作を開発。M1851やM1873が米陸軍に採用。更に1860年に勃発した南北戦争が後押しになり、経営は軌道に乗ります。

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自動拳銃M1911の開発

20世紀初頭、著名な銃設計者のジョン・ブローニングがコルト社に在職中に自動拳銃の設計を思いつき、開発に成功。M1900として最初の自動拳銃を開発すると、更にそれを進化させたM1911が1911年に米軍に採用されます。1914年に第一次世界大戦が始まるとイギリス、カナダからも注文がはいり、1918年までに42.5万丁を生産。いわゆる戦争特需でコルト社の株価は400%上昇しました。第二次世界大戦では改良されたM1911A1が70万丁生産され、その後の朝鮮戦争、ベトナム戦争でも運用され、1985年にベレッタM9が米陸軍に採用されるまで、70年以上にも渡りサイドアームとして活躍するなどロングセラーとなります。

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M16ライフルの生産で最盛期に

1960年代、コルト社はアーマライト社からAR-15ライフルの製造権を購入。その後、AR-15の軍用向けのM16が米軍の自動小銃として採用されます。そして、ベトナム戦争の勃発により、生産は急増、冷戦の拡大もあり、全世界で500万挺売上ます。この時、コルト社の売上は最高潮になります。

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冷戦の終結と特許切れ

これまで、戦争のおかげで売上を伸ばしてきたコルト社でしたが、この間に保有していた銃器関連の特許の多くが失効し、安価な競合製品が市場に出回ります。1988年には頼みの綱の軍からのM16の生産契約が打ち切られ、軍用のM1911も生産が終了。法執行機関向けの拳銃はスミス&ウェッソン社とオーストリアのグロック社の台頭により、市場を失い、そして、冷戦が終結。軍事関連の売上も望めず、業績は大幅に下落。民間向けに新製品を出すも、リコールを出すなどして、財政は悪化し、1992年に2度目の破産を申請します。だが、イラク系アメリカ人の金融家ドナルド・ジルカによって買収され、破産は免れ、彼の支援のおかげで米軍からM4カービンの生産を受注することで、なんとか持ちなおします。その後、カナダのディマコ社を買収し、コルト・カナダとしてカナダの銃市場に参入。米国内では民間用のコルト・マニファクチャリングと軍用のコルト・ディフェンスに分社化します。

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スマートガンの失敗

銃乱射事件が社会問題になっていたこともあり、コルト社はチップや指紋などによって個人認証しなくては発砲できない”スマートガン”の開発に力を注ぎます。実現できれば銃の使用を許可されていない人による偶発的な銃撃、銃の盗難、および犯罪的使用を防ぐことができるなど画期的な発想でした。しかし、不確実性が高く、故障などにより、いざという時に発砲できないといった懸念。また、顧客である銃愛好家からの反発もあり、開発は中止されます。

M4の契約切れ、AR-15の生産中止

2013年には米軍からM4カービンの生産が打ち切られると、コルト・ディフェンス社は2015年6月に破産申請し、2016年1月に正式に破産。残ったコルト・マニファクチャリングも銃規制と供給過多により、2019年9月に民間向けのAR-15ライフルの生産から撤退するなど、業績は下降の一途を辿ります。

そんな窮地のコルト社に手を差し伸べたのがCZ社であり、まさにコルト社にとってはCZ社からの買収の提案は渡りに船だったと思われます。CZ社にとっても世界的に人気のAR系のライフルを手に入れることができ、更にコルト社が築いてきたこれまでのパイプを利用して、米軍や法執行機関に入り込むチャンスを得ることになります。既に三度目の正直を終えたコルト社はCZの傘下に入ったことで再び復活できるのでしょうか?

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