イスラエルのドローンメーカーであるSpearUAVは、潜水艦が水中から射出できる世界初の無人航空機システム「Ninox 103UW」を発表しました。これにより、潜水艦は潜望鏡を海面から出さずに海上の目視確認が可能になり、潜水艦の偵察能力は格段に向上します。
世界初の水中発射型空中ドローン
潜水艦が水中から射出できるドローンはこれまでもいくつか発表されていますが、それは大抵、小型潜水艇タイプの水中ドローンになります。空中ドローンを射出する場合は海面まで浮上する必要があり、艦を海上にさらす必要がありました。今回、発表された「Ninox 103UW」は世界初の水中発射可能な空中ドローンです。ドローン自体は新しいものではなく、同社が以前から提供しているクアッドタイプのNinox 103空中ドローンになりますが、機密性の高いカプセルに格納されており、水中から発射が可能になっています。
射出されるとカプセルは海面に垂直に浮き、上部からドローンが射出されます。カプセルは最大24時間、海面上で待機することが可能です。ドローンは最大10kmの範囲を45分間連続飛行が可能で、最大風速10m/sに耐え、約1kgのペイロード能力を有します。ドローンは小型で静穏、熱源が低いのでステルス性が高く、EO/IRセンサー、そして、AIを搭載、標的の自動補足、自律した飛行が可能です。暗号化された通信、サードパーティのデータ統合、およびクロスドメイン接続を使用して、母艦の潜水艦だけではなく、海上の艦船、地上部隊といった他のプラットフォームとも通信します。
潜望鏡よりも広い視界を提供
「Ninox 103UW」の大きなメリットは潜水艦が海面の目視確認を行うのに潜望鏡を使う必要が無いということです。潜水艦の最大のメリットは海中を移動する隠密性です。しかし、それと引き換えに海上、上空の状況把握を苦手にしており、目視確認するには潜望鏡深度まで浮上し、海面から潜望鏡を出すか、または艦を海面まで浮上させる必要があります。しかし、そうすれば敵に発見されるリスクがあり、艦を危険にさらします。
しかし、それがNinox 103UWによって、浮上することなく、海上および、上空の状況把握が可能になります。現在の光学潜望鏡で確認できる視界は水平線最大2~3kmとされていますが、ドローンによりこれを超える視界を得ることができ、水平線だけではなく、上空の確認も可能になります。
ドローン自体は回収して再利用も可能ですが、回収には艦を浮上させる必要があり、その任務の特性上、近くの水上艦か地上部隊に回収してもらうか、居ない場合は使い捨ての消耗品になると思われます。
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