パキスタン空軍のJF-17サンダー戦闘機が墜落していた事が判明した。パキスタン国防省は当初、墜落した事実を公表していなかったが、JF-17に搭載されている射出座席のメーカーがパイロットが無事脱出した事を公表した事で、JF‐17の墜落が公にバレてしまった。
On Wednesday 5th June, a Pakistan Air Force JF-17 Block 2 aircraft crashed near the Jhang district. The pilot successfully ejected using the Martin-Baker PK16LE Seat.#MartinBaker #EngineeringForLife pic.twitter.com/8gIkX3ZihE
— Martin-Baker (@MB_EjectEject) June 11, 2024
今月5日、パキスタン空軍のJF-17戦闘機が墜落した。SNS上には脱出したパイロットの映像が拡散され、JF-17が墜落したという噂が広まる中、この墜落事故をパキスタン国防省及び空軍は一切、公式発表を出さずに秘密にした。報道規制が布かれているのか、パキスタンのメディアもこの事故については報道していない。しかし、別の所からJF-17の墜落が公の事実として知られることに。それは、JF-17に採用されている射出座席のメーカー「Martin Baker(マーティン・ベーカー)」社による発表だ。同社は11日、公式Ｘのアカウントで「6月5日水曜日、パキスタン空軍のJF-17 Block2戦闘機がジャン地区付近で墜落しました。パイロットはマーティン・ベイカーPK16LEシートを使用して無事脱出しました。」と、同社の射出座席を使用して、救われた7723人目のパイロットである事を発表。これにより、パキスタン空軍のJF-17が墜落した事が公式に認定されることになった。同社は、自社の射出座席が使用され、人命が救われる度に、カウントして、このようにSNSで発表している。マーティン・ベーカー社は射出座席のトップメーカーで西側の航空機の75%に同社製の射出座席が使用されている。パキスタン国防省がJF-17の墜落をなぜ、公表しなかったのかは不明だ。
JF-17サンダー
JF-17サンダー（JF-17 Thunder）は、パキスタンと中国とが共同で開発した第4世代の多用途戦闘機でパキスタン空軍とパキスタン航空複合体（PAC）、中国の成都航空機工業集団（CAC）が開発に参加した。中国では「FC-1」と呼ばれている。2003年に初飛行、2009年からF-7、ミラージュIIIなどから代わる形で量産型の配備がパキスタン空軍で始まった。最大速度はマッハ1.6、実用上昇限度は15,240m、戦闘行動半径は900kmで、給油なしでの航続距離は2037kmになる。2013年には空中給油機能、データリンク、電子戦能力などを追加したBlockIIが登場。2015年に発表されたBlockIIIではAESAレーダー、ヘルメットマウントディスプレイ（HMD）、赤外線捜索追跡（IRST）システムを搭載すると発表している。
パキスタン空軍は150機のJF-17を発注。初回分は全て中国で生産されたが、現在の生産シェアは中国が58%、残りの42％がパキスタンで生産されている。エンジンはロシア製だが、2007年のテスト飛行から、事故が相次ぎ、その後も排気ノズルに亀裂が発生するなどの問題で飛行停止になっている。そういった問題もあり、中国はJF-17用の国産エンジンの開発に着手したが、パキスタンはロシア製の方がまだ信頼できるとして、ロシア製エンジンを使用し続けており、エンジン開発元のロシアのユナイテッドエンジンコーポレーションは2020年にJF-17用に新しいエンジンを開発している。
JF-17は第4世代戦闘機としては手ごろな2500万ドルという価格で中堅国、途上国に人気でパキスタンの重要な防衛輸出品でもある。2019年に初の輸出先としてミャンマーと16機の販売の契約を締結。2021年にはナイジェリアと3機。そして、今年2024年2月には機数は不明だがアゼルバイジャンと総額16億ドルの契約、同年5月にはイラクと12機の販売について契約を締結するなど、今年に入って海外輸出は好調だった。そんな中で、今回、墜落事故があった形だ。公表しなかったのはJF-17の評価に傷が付き、海外輸出に影響すると考えたのかもしれない。ただ、最初にJF-17を購入したミャンマーは同機を「作戦に不適格」と宣言している。ミャンマー空軍は2019年から2021年にかけてJF-17を受け取ったが、故障と構造上の欠陥が判明したため、運用を中止、地上に留まったままになっており、1970年代に中国で開発された旧式のQ-5戦闘攻撃機を反政府組織との戦闘で使用している。
