アメリカは4日、サウスカロライナ沖の大西洋洋上を飛行していた中国の監視気球を撃墜しました。撃墜には第五世代ステルス戦闘機のF-22と空対空ミサイルのAIM-9Xサイドワインダーが使用されました。
2日にアメリカ本土上空で発見された中国の監視気球。発見時に撃墜が検討されましたが、市バス三台分の大きさがある気球を本土上空で撃墜すれば破片が住宅地にも飛散する可能性があるとして見送られ、洋上に出た4日、米空軍の戦闘機によって撃墜が試みられます。
第一次大戦時の英雄のコールサイン
アメリカ上空に現れた中国のスパイ気球はサウスカロライナ州沖で米空軍のF-22戦闘機の空対空ミサイルによってpic.twitter.com/ek62NTmUbRpic.twitter.com/jeeHe7PWFr
— ミリレポ (@sabatech_pr) February 5, 2023
バージニア州ラングレー空軍基地からF-22ラプター戦闘機2機が撃墜の為、離陸。2機にはミッションコールサインとして、第一次世界大戦中の米軍のエースパイロット「FRANK01」と「FRANK02」がそれぞれ名づけられました。フランクは大戦中、ドイツの観測気球14機と航空機4機を撃墜しています。気球に達した2機の内1機が午後2時39分、気球に向けて空対空ミサイルAIM-9Xサイドワインダー1発を発射。バルーンは破裂し、大西洋に落下しました。
かかったコスト
アメリカは気球を撃墜するために2億ドルのF-22を2機を出撃させました。F-22の飛行コストは1時間あたり52,438ドル(約700万円)と所有する戦闘機の中で最も高額です。これは2022年時点のコストなので燃料高の今はもっと上がっているかもしれません。撃墜に使用したAIM-9Xの価格は1発あたり40万ドル(約5000万円)です。更に米軍は空軍のKC-135空中給油機、海軍のP-8A ポセイドン哨戒機、米国沿岸警備隊のHC-130捜索救難機も同空域に飛行させており、気球撃墜には多額の費用が投じられました。
なぜ?機関砲を使用しなかった
F-22には弾数480発のM61A2 20mm機関砲を搭載していますが、今回、これを使わずAIM-9Xを使用しました。コストを考えれば機関砲の方が安く済みます。ほぼホバリングした状態の気球を機関砲で撃ち落とすことも難しいことではありません。では、なぜミサイルを使ったのか?その理由の一つにペイロードの回収があるとされます。気球にはカメラ、センサー、レーダが搭載されているとされ、これを無傷で回収するためには下のペイロード部分に当てないように正確に狙う必要があり、ミサイルが選択されとされます。ミサイルはバルーンと下に吊り下げられているペイロードの間を撃ち抜き、バルーンは破裂、ペイロードは落下しました。
そして、もうひとつ、機関砲を使用しなかった理由として、1998年にカナダの気象観測気球が漂流した時の事例があったからかもしれません。気球が制御を失いロシアに向けて上空を漂流してしまったため、カナダ空軍のCF-18 ホーネット戦闘機が撃墜を試みました。その際、1000発以上の機関砲を発射、気球に穴を空けることに成功、ロシアに達することは防ぎましたが、実は撃墜とはならず、ガスを漏らしながら、その後も数日間、飛行を続けたということがあります。高高度では気圧が低く、ガスの漏れが遅くなります。そういった、過去も踏まえ、ミサイルが使用されたものと推測されます。
水深14mの海上に落下したとされますが、アメリカはこれを回収する予定です。
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