米陸軍、商用ドローンによる爆弾投下を訓練に取り入れる

米陸軍、商用ドローンによる爆弾投下を訓練に取り入れる
US Army

ロシア・ウクライナ戦争でウクライナが多用している、商用ドローンによる爆弾投下。数十万のドローンで数億円の戦車の破壊に成功するなど、大きな戦果を挙げている。この成果に世界最強のアメリカ陸軍も無視できず、初めて野外訓練にドローンからの爆弾投下を取り入れた。

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Task&Purposeの報道によれば2月15日、第18空挺軍団司令官クリストファー・ドナヒュー中将は、ロシアによる侵攻に対するウクライナの防衛戦術から教訓を得て、ノースカロライナ基地の兵士たち小型無人機から爆弾を投下する訓練を行った事を発表した。同種の訓練を米陸軍が実施するのは初であり、ノースカロライナ基地は陸軍が小型無人機から弾薬を投下する訓練を行える”最初の施設”であると述べた。陸軍の試みは、今後2年間で数千の自律システムを配備することを目的とした国防総省の構想に基づくもので、今回の訓練は市販品として入手可能な小型で安価、消耗品としてのドローンを使用した戦術的シナリオを試み一環でもある。世界最強とされ、ハイテク装備を揃える米軍がこのような訓練を取り入れたのは興味深い。

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小型ドローンで戦車を破壊

現代戦における無人航空機システム (UAS) の使用は大幅に増加している。敵の位置を監視するための小型クアッドコプターの使用から、ドローンに弾頭を搭載し、標的に突っ込む自爆ドローン。高度なセンサーと精密兵器を装備し、操縦者の視界を超えて広大な範囲で作戦遂行できる大型無人航空機に至るまで、無人機はあらゆる状況で優れた航空能力を提供する。資金力が豊富な米軍はこれまで無人機は軍用に開発されたハイエンドドローンを多用してきた。小型の偵察用ドローン「BlackHornet」、数千kmの飛行能力を有し、高高度からの監視と精密爆撃が可能なMQ-9リーパーシリーズと言った無人機・ドローンだ。自爆ドローンにおいてはウクライナにも提供しているSwitichBladeを配備している。しかし、現代戦において、このような高度な軍事ドローンは必ずしも必然性はなく、安価なクアッドタイプの商用ドローンで敵戦車や陣地を破壊できることをウクライナ軍が証明した。最近でもハマスがイスラエル軍のメルカバ戦車を同様の方法で破壊している。

ロシア軍に対し戦力に劣るウクライナ軍はコストが安く、入手が容易、短期間で量産可能な商用ドローンを手に入れ、それを手榴弾や迫撃砲弾、火炎瓶を搭載、投下できるようにカスタマイズした。ホバリング可能なクアッドコプターの特性をうまく活かし、上空から戦車のハッチに爆弾を投下したり、弱点部分を的確に狙い、致命傷を与えた。わずか数十万のドローンで数億円の戦車を無効化した。

ウクライナでは昔ながらの塹壕戦が続いているが、昔と違うのはドローンがあること。ドローンによって上空を偵察しながら、塹壕内にいる敵の位置を把握し、爆弾を投下している。塹壕は敵弾から逃れることはできても上空からの爆撃を防ぐことは不可能だ。

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米軍ではこれまでこういった役目を空軍のMQ-9リーパーなど大型無人機が担っていたが、同機は5000万ドル以上と高額であり、飛行場での運用が前提。フレキシブルな出動は難しい。中国といった正規軍相手では、大型無人機は直ぐに撃墜される。その点、クアッドタイプの商用小型ドローンであれば、消費前提であり、数が揃えられる。歩兵が携行し、どこからでも離陸可能、陸軍内で運用が完結するので、軍を飛び越えた航空支援を依頼する必要もない。商用ドローンなので、高度な専門的知識も求められないので訓練も容易だ。

米軍はこれら商用小型ドローンを使用するsUAS能力、戦術、訓練、および野戦の欠如を明らかにしている。ただ、それよりも懸念なのは、これに対抗するカウンタードローン、C-UAS能力も欠如していることを認めている点だ。実際、これらの小型ドローン攻撃に対して、有効的な手段を確立している国はまだない。常にそのリスクにさらされているウクライナ、ロシアの両軍も有効手段を打てていない。現行の主な対策は戦車の砲塔上部に取り付けられたゲージや、スモーク、塹壕に張られたネットなど、物理的で古典的な方法だ。米陸軍としてはsUASを訓練に取り入れる事で戦場での利用はもちろん、これらの攻撃に対する有効な対策手段を確立する目的もあるかもしれない。

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