米国国防総省の研究機関である国防高等研究計画局(DARPA)は8月中旬に「地面効果翼機(Wing in Ground Effect Aircraft:WIG)」を開発するための情報の提供とサポートを求めるRFI(情報依頼書)を公開した。
地面効果翼機とは
地面効果翼機(WIG)とは翼を持ち見た目は飛行機のような乗り物になるが、翼は飛行機より短く、尾翼が長く、空高くは飛べず、高度は僅か10メートルと水面・地上すれすれに飛ぶ乗り物のことを指す。飛行機と高速艇が合わさったような乗り物だ。中途半端な乗り物のようだが、翼と地面すれすれを飛行することで強い揚力を得る事ができ、船の10倍以上のスピードと、同サイズの飛行機よりも多い積載量を手にすることができる。この分野で世界を先行し、実用化しているのがロシアで、1960年代に「エクラノプラン」を開発。 ”地面効果翼機(WIG)” よりも「エクラノプラン」がこの乗り物示す単語と言ってもいい。画期的な乗り物のように思えるがWIGは課題も多く、ロシアでも運用は終わっている。
新しいプラットフォームを手に入れたい
RFIの中でDARPAは現在の輸送方法について課題として、従来の空輸プラットフォームは高速と大容量のペイロードを提供するが、長い準備滑走路を必要とし、海上作戦を支援する能力が限られている。ヘリやオスプレイといった垂直離着陸機(VTOL) 及び、水上航空機は航続距離・ペイロード能力が限定され、運用には艦船、又は陸上基地といったインフラに依存すると課題を挙げた。海上輸送の主流、船舶は港湾設備が必要な上、スピードが遅いというデメリットがある。WIGは従来の海上・空輸プラットフォームの運用上の制約をクリアする手段と考えている。しかし、現在のWIGでは海抜の高い場所では運用できず、荒れた海を飛行することも難しい。また、回避する能力が劣っているので港や湾内といった混雑した場所で運用が難しいといった課題も指摘している。しかし、DARPAは、これらの課題を解決すればWIGが新しい海上プラットフォームになり、戦略上大きな効果を与えると考えている。DARPAは新しいWIGに積載量100トン、複数台の車両を搭載できるペイロードできる能力を求めている。
米軍がWIGに関心を持っている理由として考えられるのが、インド太平洋・東アジアにおけるプレゼンスの向上だ。中国海軍が力を伸ばす中、この海域に限れば、中国軍と米軍の戦力差は逆転している。多くの島々が点在するこの地域でWIGを実用化できれば、迅速な上陸、部隊展開を可能にする。また、低高度を高速飛行するためレーダーに探知されにくいというメリットもあり、戦略上優位に立つことができる。
WIGは1990年代以降は廃れていたが、ロシアも近年、次世代型のエクラノプランの開発に着手するなど、再度関心を集めている。次世代のWIGが登場し、未来の海上の戦闘は高速化するかもししれない。
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