アメリカ海軍中央司令部(NAVCENT)は1月27日、アラビア湾(ペルシャ湾)で新しい無人水上艇(USV)「Saildrone Explorer(エクスプローラー)」の運用を開始しました。これはイランとの対立が続くこの地域でのイニシアチブをとることが目的で、同地域に展開する第5艦隊にこのUSVは編入されます。
風の力で推進する無人艇
エクスプローラーはもともと、研究のために海洋の環境情報を収集することを目的にカリフォルニアのSaildrone(セイルドローン)社によって設計・開発されました。全長7m、高さ4.9mのこの船は、社名にある”セイル(帆)”ドローンというように、自然エネルギーである風を推進力としているため、航行のためのエネルギーを補給する必要がありません。2013年には補給なしで西海岸からハワイまで4,100 kmの航行に成功しています。米海軍ではこの特性に目をつけ、海洋での長期期間にわたる監視、海洋情報を収集するためのUSVとして採用します。
持続可能なUSV
エクスプローラーには自律航行のためのAI、コンピューター。7kmまで水深測定可能なシングルビームまたはマルチビームソナー、漁業調査のためのエコーサウンダー、または水流測定のための音響ドップラー電流プロファイラーが搭載、海上警備用にカメラ、音響ペイロードを装備することもできます。得られた情報はデータネットワークによって司令部に送信されます。
船は風の力で動きますが、これらの電子機器の電力はどうするかというと、船には太陽光発電のソーラーパネルが搭載されており、推進力同様に自然エネルギーによって電力を確保、これによりエクスプローラーは最大12か月間、24時間365日、給油、回収することなく長期にわたって情報収集の任務に就くことができる持続可能なUSVです。
アラビア湾に配備
NAVCENTは、中東地域の戦略的重要性とこの地域の独特の地形、気候下における無人水上艇(USV)の有用性と運用試験を行うために昨年9月、バーレーンにUSVの運用試験を行うためのタスクフォース59を設立。タスクフォースは MANTAS T12、Devil rayT-38といった他のUSVと合わせ12月からエクスプローラーの運用試験をサウジアラビアとエジプトに挟まれたアカバ湾で開始。30日間の連続運用による試験は無事に終わり、エクスプローラーは持続性とミッション要件の目的を果たし、1月27日よりアラビア湾での配備が始まりました。
同湾は周辺に産油国を抱える石油資源の世界的な供給地で、多くのタンカーが行き来しています。しかし、湾を挟んで向かいにあるイランとアメリカ・湾岸諸国は火種を抱えており、最近ではタンカーの襲撃が相次いでいます。エクスプローラーはこの地域の海洋データの収集とともに安全な航行のためのパトロールを休みなしで行います。
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