8月中旬にアフガニスタンのカブール空港で繰り広げられた緊迫とカオスの一幕が明らかになった。アメリカの軍事メディアのTask&Purposeによると、8月15日にアフガニスタンの首都カブールが陥落した際、空港に迫るタリバンをくい止めるために米軍兵士は機転を利かせてタバコ2つと機関砲を搭載したピックアップトラックを交換して空港を守ったという話だ。
タリバンは7月から8月にかけて、電光石火のスピードでアフガニスタンのほぼ全土を制圧した。その展開を米軍も予期しておらず、9月11日の完全撤退に向けて、アフガニスタンに残された戦力は僅かしかいなかった。8月15日にカブールが陥落すると、残された部隊の最優先事項は大使館員や協力国のスタッフが安全に国外に脱出するまで空港を何としても死守することだった。しかし、撤退作業進めていた米軍に残された戦力は1000人と僅かで手元にあるのはライフルや機関銃といった小火器だけで、アフガニスタン政府軍の兵器を鹵獲し、戦力的にも勝るタリバンに対抗できる十分な火器を持ちあわせていなかった。追加派兵の部隊が到着するまでには、まだ時間がかかる。迫るタリバンに対し、隔てるのは薄い壁だけ、空港を守るアフガニスタン政府軍もカブールが陥落した今、撤退の準備を進めていた。
空港を守る第82空挺師団第504連隊第1大隊の指揮官であるアンディ・ハリス中佐と兵士のアルサジャド・アルラミはそこで、機転を利かせる。移動しようとするアフガニスタン軍と交渉し、彼らが使用していた軍用車両を手に入れようとした。それはトヨタのSUVであるランドクルーザーで、荷台にソ連製の対空機関砲ZPU-2を搭載したもの。中東やアフリカではメジャーなカスタマイズで軍や武装組織の車両としてよく見られるものだ。ZPU-2は114mm口径、14.5x114mm弾を使用する強力な機関砲で軽車両であれば装甲を貫通できる威力がある。対空砲ではあるが水平射撃も可能で、重装甲の車両を持たないタリバンによっては非常に脅威になる。これをディッピングタバコと呼ばれる無煙タバコ2つと交換した。実際、既に崩壊したアフガン軍の兵士が空港を警備する士気があったかどうかは微妙であり、逃げるにしても機関砲を搭載した車両では攻撃される可能性もあったので良い交換だったのではないだろうか。
交渉したアルラミはイラク出身でイラク軍にも従軍した経験があり、車両に搭載されたZPU-2の操作の仕方を知っていた。彼は同僚に操作方法を教え、車両はタリバンを止めるための抑止力として使われ、カブール陥落から8月末の完全撤退までタリバンの潜入を許さなかった。
この車両は米軍の撤退と合わせ、クェートに移送されている。車両は”戦場での機転”、”任務達成のための創意工夫”の象徴としてノースカロライナ州フォートブラッグにある第82空挺師団戦争記念博物館に収納される予定で、現在クェートで手続き中だ。
Source
https://taskandpurpose.com/news/army-paratroopers-toyota-technical-kabul-airport/