
英国のスターマー首相は16日、和平協定を履行するため必要であれば英国はウクライナの安全を確保するために軍隊を派遣する「準備と意思」があると述べた。しかし、NATO加盟国の足並みは揃っていない。
トランプ大統領がヨーロッパ抜きでプーチン大統領とロシアとウクライナの和平交渉を開始すると明言した事にヨーロッパ各国は危機感を募らせており、ロシアに有利な形で勝手に停戦を進めるのではという懸念が上がっている。18日にはサウジアラビアで米国とロシア両国の代表が集まりロシア・ウクライナ戦争の終結に向けた予備交渉を開始すると報じられている。それをうけ、フランスのマクロン大統領の呼びかけのもと、欧州各国首脳は先駆けて17日、フランス・パリに集まり、ウクライナでの戦争をめぐる協議を行った。会合にはマクロン大統領の他、イギリスのスターマー首相、ドイツのショルツ首相、スペインのサンチェス首相、イタリアのメローニ首相、オランダのシューフ首相、デンマークのフレデリクセン首相、ポーランドのトゥスク外相、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長、欧州理事会のアントニオ・コスタ議長、NATOのマルク・ルッテ事務総長が出席した。
We are facing a once in a generation moment for the collective security of our continent.
— Keir Starmer (@Keir_Starmer) February 17, 2025
This is the time for us all to step up. pic.twitter.com/tG7WBv7HMI
イギリスのスターマー首相は会合前、英メディアのデーリー・テレグラフ紙に書簡を送り、和平協定を履行するため、平和維持軍としてイギリス軍をウクライナに派遣する「用意と意志がある」と発表した。会合の中では停戦後に平和維持を担う部隊の派遣をめぐっても話しあったものとされる。スターマー首相は、協議後もウクライナの恒久的な平和が約束されれば、平和維持部隊を派遣する事を明言している。停戦合意後もロシアが約束を守るかは不透明であり、双方の軍が睨みあえば、またいつ武力衝突が起きるかは分からず、その抑止力としてロシアとウクライナの境界線の監視には当事国とは別にロシア軍を抑えられる平和維持部隊が必要だ。
ただ、平和維持部隊の派遣はそう簡単な事ではない。英公共放送BBCの報道によると、英王立防衛安全保障研究所(RUSI)のマルコム・チャーマーズ副所長はロシア軍の抑止力になるには相当の戦力が必要と分析。元イギリス陸軍総司令官のダナット卿は平和維持部隊には約10万人の兵士が必要で、英国がウクライナの平和維持活動に参加する場合、その内の5分の2である約4万人の兵士を派遣する必要があるかもしれないと分析している。大陸国であるロシア・ウクライナで平和維持軍の主力になるのは陸軍だが、英陸軍の総数は約11万人。その内、正規兵7.5万人、ネパール人からなるグルカ兵が5千人、そして予備役が2.5万人、その他職員が5千人だ。ずっと同じ兵を駐留させるわけにはいかないのでローテーションも考えると、イギリス軍に平和維持軍を派遣するだけの兵力はないとダナット卿は述べている。ロシア軍がもし侵入してきてもそれを撃退できる戦力が必要と考えると、それなりの練度のある部隊を前線に配置、戦車や自走榴弾砲といった重火器も必要であり、後方支援部隊や空軍も必要と述べている。英陸軍に戦車は213両のチャレンジャーIIしかなく、現在、チャレンジャーIIIへのアップグレードが行われており、戦闘準備が整った戦車は150両ほどだ。これだけの戦力で広大なウクライナをカバーするのは難しい。イギリスは現在、防衛費を国内総生産(GDP)の2.3%から2.5%に引き上げることを約束しており、軍備拡張を計画しているが、それがいつ達成されるかは明言していない。
It is a difficult situation for Europe. We welcome the talks about peace for Ukraine. But it must be a fair and sustainable peace. And: Ukraine must be part of these talks. Europe will keep on supporting Ukraine. This is what I stressed in my meetings with @ZelenskyyUa. pic.twitter.com/vqW8wd9SGJ
— Bundeskanzler Olaf Scholz (@Bundeskanzler) February 17, 2025
NATOとして平和維持部隊を派遣する場合、英仏独がメインになると思われる。フランスのマクロン大統領は前向きな姿勢を示しているとされるが、ドイツのショルツ首相は、部隊の派遣ついて「時期尚早で、その議論をいま行うのは間違っている。」と消極的。「こうした議論には少しイライラしている」と会合後に語っている。ドイツはロシアによる侵攻当初から、支援に対し消極的で各国の支援の動きを見てから追随している。また、ウクライナに多くの軍事支援を行ってきているポーランドのドナルド・トゥスク外相は会合に先立ち、平和維持活動の一環としてポーランド軍をウクライナに派遣する可能性を否定している。ポーランドはロシアの飛び地カリーニングラード、ロシアの衛星国ベラルーシと隣接するなど、自国の国境も穏やかではない。他の国は検討中、様子見として立場を明確にしていない。ホワイトハウスは、戦争で荒廃した国に平和維持軍を派遣する意思があるかどうかなど、NATO加盟国に質問票を送っている。
トランプ大統領はヨーロッパから米軍を引き揚げるとも言っており、先日、ヨーロッパを訪れたヘグセス国防長官も欧州に駐留する米軍について「米国の存在が永遠に続くと想定することはできない」と将来的な撤退可能性について触れおり、ウクライナに平和維持部隊を派遣する可能性は低いと思われる。米国の支援なしに10万人規模の平和維持軍をNATOだけで派遣するのは難しいと思われ、その代替案はウクライナがNATOに加盟し、相互防衛の枠組みに入る事だが、それにトランプ大統領は否定的だ。