ウクライナ軍は中央アジアと東ヨーロッパの境界にある塩湖であるカスピ海を拠点するロシア海軍のカスピ小艦隊を自爆無人機で攻撃した。ここはウクライナの前線から1100km以上も離れた場所にあり、ウクライナ軍の長距離精密攻撃能力を示した。
ウクライナ軍は前線から1000km以上離れたロシア内陸のカスピ海カスピスク港に停泊しているカスピ小艦隊の艦艇を自爆ドローンで攻撃したpic.twitter.com/Vf7dnVSbag
— ミリレポ (@sabatech_pr) November 6, 2024
ウクライナは6日水曜日、ロシアのダゲスタン共和国の軍事標的を初めて攻撃した。攻撃した場所はアゼルバイジャン国境から北に200kmの距離にあるカスピ海沿岸のカスピスクの港。そこはカスピ海を活動拠点とするロシア海軍カスピ小艦隊と海軍歩兵隊の本拠地となっており、艦艇はウクライナに対してミサイル攻撃を実施し、第177海兵連隊はヘルソン州とザポリージャ州での戦闘作戦に参加していた。ウクライナ軍はミサイル攻撃を行う艦艇を標的に自爆無人機による攻撃を行ったとされる。
攻撃の成果は明らかにされておらず、ロシア当局はドローンを全て撃墜したと述べているが、自爆ドローンが艦艇に向かって突っ込む様子がSNS上に拡散されている。爆発が艦艇に直撃したものなのか港湾施設なのかは分からず、被害状況は不明だ。ウクライナ軍が攻撃に何機の自爆ドローンを使用したのかはわからないが、撮影者がスマホで撮影している時点でこの少し前から複数機の襲来があったことが推察される。
有人機のアエロプラクトA-22を自爆無人機に改修
Alexander Kovalenko posted a video of the UAV attack today on the Russian Navy Base in #Kaspiysk, #Dagestan, Russia, which confirms the aircraft used was an Aeroprakt A-22 Foxbat converted into a one-way attack UAV.#OSINT #Ukraine #Russia pic.twitter.com/Zww1tdbFnq
— OSINT (Uri Kikaski) 🇺🇸 🇨🇦 🇬🇧 🇺🇦 🇮🇱 (@UKikaski) November 6, 2024
そして、注目すべきは攻撃された場所がウクライナの前線から1100km以上離れた場所であったことだ。攻撃にはウクライナ製の超軽量航空機「アエロプラクトA-22」が使用されたとされる。同機は有人機としては破格の4.5万ユーロで販売されており、小型航空機としては世界2位の販売数を誇っている。本来は2人乗りの有人機だが、ウクライナ軍は自律飛行可能な無人機に改修し、2024年4月から自爆ドローンとして使用しているのが確認されている。最高速度170km/h、巡航速度160km/h、最大離陸重量450kg。航続距離は燃料満タンで1100kmとされるので、増槽タンクを追加していたとしても、今回の攻撃距離は結構ギリギリだったと思われる。
カスピ小艦隊とは
ロシア海軍には5個の艦隊があり、北方艦隊、太平洋艦隊、バルト艦隊、黒海艦隊の4個艦隊とカスピ海小艦隊の1個小艦隊で編成されている。カスピ小艦隊はその名の通り、中央アジアと東ヨーロッパの境界にある塩湖であるカスピ海を活動拠点する艦隊だ。小艦隊というように他の4個艦隊と比べ、規模は小さい。活動範囲が湖ということもあり、揚陸艦といった大型艦、潜水艦などは配備されていない。小型のフリゲート、コルベット艦が主体だ。
艦隊には最大射程1500~2000kmのカリブル巡航ミサイルを発射可能なゲパルト級フリゲート艦、ブヤン級コルベット、カラクルト級コルベットが配備されており、カスピ海からウクライナに向けてミサイル攻撃を行っているのが確認されている。ただ、攻撃にはロシア領内を1000km以上飛翔することになり、過去にはミサイルがロシア領内に落下する事故が起きている。
カスピ海はヴォルガ川とドン川を結ぶ運河を通じて黒海と接続されており、ここを使用する事でカスピ海と黒海との間で船の行き来が可能だ。実際、黒海艦隊の小型ミサイルコルベット艦 「ヴェリキイ・ウスチュグ」 が、ウクライナ軍のBM21のロケット弾の攻撃で損傷し、戦闘不能となり、修理のため、カスピ海に向けて移動するのが確認されている。つまり、カスピ小艦隊の艦艇を黒海に送ることも可能ということ。ウクライナ軍は、2024年2月時点でロシア黒海艦隊の3分の1に相当する24隻の軍艦と1隻の潜水艦を無力化したと述べており、黒海艦隊は現在、クリミア半島から撤退している。前から、カスピ小艦隊から艦艇を送って戦力を補完するのではと噂されている。