ウクライナ軍は密かに対レーダーミサイルAGM-88を入手していた

ウクライナ軍は密かに対レーダーミサイルAGM-88を入手していた
US Air Force

ロシア側がウクライナの放ったミサイルの破片を確認したことで、ウクライナ軍が密かに対レーダーミサイルの「AGM‐88 HARM」を入手していたことが判明しました。

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ロシア兵がウクライナ軍から放たれてミサイルの残骸を確認したところ、ミサイルの安定翼部分にはBSU-60 A/B 、シリアル番号(S/N)QLN 406384と描かれていました。これらはAGM‐88の型番を意味しています。西側からの軍事支援としてHIMARSやハープーンミサイルをウクライナ軍が入手しているのは周知の事実です。それは提供国が軍事支援の内容を公表しているからです。7月にウクライナのオレクシー・レズニコフ国防相は対レーダーミサイルを受け取る旨の発言をし、それはアメリカも認めていましたが、それが何なのか、具体的な言及はなく、AGM‐88を提供したという公式情報はありません。

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AGM-88 HARMとは

US Marine

AGM-88 HARMは、テキサス・インスツルメンツ社が開発し、レイセオンが生産する第3世代の対レーダーミサイルです。1983年に就役、何度か改修が重ねられ、現在15カ国以上の軍で使用されています。対レーダーミサイルとあるように地上の防空レーダー網を破壊することを目的にした空対地ミサイルになり、シーカーはレーダーから発射される電波を探知、電波を辿って誘導されるミサイルになります。レーダー電波を絶たれると誘導できなくなるため、その隙を与えないよう、空対地ミサイルとしては高速なマッハ1.84以上のスピードで標的に向かって飛行します。最大飛距離は100kmです。

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ウクライナ軍の航空機に搭載できるのか?

AGM-88 HARMが運用搭載可能なのはアメリカのF-16、F/A-18、F-15E、F-35といった戦闘機。そして、ドイツ空軍が所有するトーネード戦闘攻撃機、英独伊西が所有するユーローファイタータイフーンにも対応していますが、現在、NATOヨーロッパの機体ではAGM-88を搭載していません。ここで、謎とされているのが、AGM‐88を何から撃ったのか?ということです。ウクライナ空軍はこれら西側の機体は所有していないく、提供されたという情報もありません。ウクライナ空軍が運用するのはソ連製のSu-27、Mig‐29の両戦闘機にSu-24、Su-25の両攻撃機になります。これらの機体にAGM-88の搭載実績はありません。

ミサイルは単純に搭載すればいいだけではなく、機体のアビオニクスと電子システムと統合する必要があります。NATO加盟国ではないウクライナ空軍の機体はまず、NATO基準のシステムに対応していません。しかし、スロバキアからNATO基準に回収されたMIG-29を受け取っており、これを使用した可能性はあります。ただ、NATO基準に改修してあったからといって、使えるわけではなく、そもそも、Mig-29でのAGM-88の運用実績がありません。使用するには改修と幾度にも渡る発射テストが必要です。だいぶ前から、搭載に向けた準備を行わなければなりません。そのようなことを行っていたという情報はありません。数年まえにノースロップ・グラマン社がAGM-88の地上発射型の構想を発表しましたが、それが実現したという情報はありません。Su-24とSu-25にはロシア製の対レーダーミサイルKh-58が搭載でき、これを技術者が逆コンパイルしてAGM-88に対応させという人もいます。

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中には「ロシアの欺瞞工作ではないか」という声もあります。他の戦地で回収した破片をあたかも今回の戦争で使われ、NATOの戦闘機から発射、NATOが介入していることを示すことです。しかし、これは開戦当初ならともかく、今のフェーズでは全く無意味です。NATOが介入されたら困るのはロシアです。

まだ、確認は一発のみになるので、今後、数発の攻撃が確認されれば、いろいろ明るみなってくるでしょう。

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Source

https://defence-blog.com/russian-troops-found-wreckage-of-us-made-high-speed-anti-radiation-missile/

https://www.thedrive.com/the-war-zone/u-s-confirms-air-launched-anti-radiation-missiles-sent-to-ukraine

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