ウクライナ海軍のエイダ級コルベット艦ヘーチマン・イヴァン・マゼーパが完成間近、でも引き渡せるのか?

ウクライナ海軍のエイダ級コルベット艦ヘーチマン・イヴァン・マゼーパが完成間近、でも引き渡せるのか?
Photo Военный Осведомитель

トルコ海軍のペンディク海軍工廠でウクライナ海軍向けに建造されているエイダ級コルベット艦「ヘーチマン・イヴァン・マゼーパ」の船体はほぼ完成しており、進水を控えている状態です。年末にはウクライナに引き渡せる状態になる予定ですが、現在の戦況で引き渡しが可能なのかという懸念があります。

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エイダ級(Ada-class)コルベット艦はトルコが建造する戦闘艦で、2020年12月にウクライナ政府は2隻を注文。その後、4隻に拡大され、1隻がトルコで建造、3隻はウクライナのムィコラーイウのオケアン造船所でライセンス生産する契約を締結します。今回、完成を控えているのは2021年9月にトルコで起工した1番艦です。2022年8月18日には17世紀のウクライナの軍人にちなんでHetman Ivan Mazepa(ヘーチマン・イヴァン・マゼーパ)と命名され、船上番号F211がつけられます。装備に関してはトルコで一部分まで行い、2022年末にはウクライナに曳航され、残りの工事が進められ、2023年には完成する予定になっています。

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エイダ級(Ada-class)コルベット艦とは

エイダ級コルベット艦はトルコ海軍向けの水上艦として1996年に開発が始まった戦闘艦です。トルコ海軍には2011年に1番艦が就役し、計4隻が建造されています。また同艦は海外にも輸出されており、輸出されているトルコ製兵器としては最も大型で高額なトルコの武器輸出における戦略上の重要兵器です。

沿岸域での対艦・対潜任務を目的したステルス・コルベットには主な武装として76mm単装速射砲1門、艦対艦ミサイル8基、RAM近接防空ミサイルシステム1基、短魚雷発射管2基を搭載。発射可能な対艦ミサイルはウクライナ製のネプチューン、西側のハープーンとNSM、トルコ製のアトマカがあります。魚雷にはイタリアとフランスが共同開発した対潜水艦誘導魚雷MU-90を搭載し、ウクライナ海軍に数少ない対潜攻撃能力を持つ艦になり、対潜任務に必要な音響・水中ソナー、船体後部には対潜哨戒ヘリNH90の発着が可能な飛行甲板を完備しています。

トルコ製のアドベント戦闘管理システムを搭載し、戦術ネットワークとリンクし、水中を進む潜水部隊と途切れない通信機会を提供します。

全長は99.56m、排水量は2400t、乗員は最大106名。最大速度は29ノット(53km/h)、15ノットで6,482kmを連続航行します。

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ウクライナに引き渡すことは可能なのか

完成間近なのはいいですが、懸念として上がっているのがイヴァン・マゼーパをウクライナに引き渡すことが可能なのかという点です。現在、戦時中であり、戦場と化している黒海に繋がるボスポラス海峡は現在、モントルー条約のもとトルコが軍艦の通過を認めていません。そして、イヴァン・マゼーパが建造されているペンディク海軍工廠があるのは黒海の外側マルマラ海に面しています。トルコ以外の国が建造していれば、問答無用で海峡の通過は拒否されるでしょうが、建造しているのはトルコ海軍です。契約上は引き渡し義務があると思われ、当事者であるトルコがどう判断するのか。もし、仮に引き渡せるとしても、ロシア側が黙って見ている保証はありません。主要艦を失っているウクライナ海軍は現在、ロシアの脅威とはなっていませんが、対艦ミサイル、そして対潜能力をもつ船をウクライナ海軍が得る事になれば、黒海艦隊には非常に脅威です。数こそ勝っていますが、黒海艦隊に対艦ミサイルはさほど残っていないとされています。そのため、無防備な曳航中に潜水艦からの魚雷で狙う可能性は十分あります。ウクライナとしても新造艦を撃沈されるわけにもいかないでしょう。

仮にウクライナに到着しても。その後、工事を終え、就役できるのは早くとも2023年の春以降になると思われ、開戦から1年後はどういった戦況になっているのでしょうか。

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