11月22日、ドイツのハンブルク港近くに停泊していたイギリス海軍の航空母艦「クイーン・エリザベス」の近くを正体不明のドローンが飛行していると報告された。また、アメリカ空軍は20日から22日かけて、イギリスにある3つの空軍基地上空で多数の正体不明のドローンが目撃されたことを発表するなど、欧州NATOの軍事拠点で正体不明のドローンの目撃情報が相次ぎ、懸念が高まっている。
米空軍が駐留する3つの英空軍基地にドローンが侵入
イギリス公共放送のBBCの報道によれば、20日水曜日から22日金曜日の3日間にかけて、サフォーク州の英空軍レイクンヒース基地とミルデンホール基地、および隣接するノーフォーク州のフェルトウェル基地の上空で小型の無人航空機システム、いわゆる”ドローン”が目撃された。基地を使用している米空軍は、ドローンが敵対的とみなされるかどうかは現段階では不明だと述べており、侵入した無人機の数については明かしていないが、ただ、基地によって無人機の数や大きさ、構成が異なっていたとだけを公表している。最初に確認された20日には対応として、レイクンヒース基地のF-15Eストライクイーグル戦闘機が緊急発進している。
欧州の米空軍広報担当者は「無人機は常に監視されており、基地のリーダーらは、侵入が基地の人員や重要なインフラに影響を与えなかったと判断した。作戦上の安全を守るため、我々は具体的な部隊保護措置については議論しないが、施設を保護する権利は保持する。我々は引き続き領空を監視しており、基地の人員、施設、資産の安全を確保するため、受入国の当局や任務パートナーと協力している。」と述べ、基地の人員や施設には影響を与えなかったと報告しているが、ドローンの撃墜や鹵獲の有無、所属などは明らかにしていない。基地を所有する英国防省の報道官は「我々は脅威を深刻に受け止めており、防衛施設では強固な対策を維持している。これには対ドローンセキュリティ機能も含まれているが、セキュリティ手順についてはこれ以上コメントできません。」と述べている。
ドローンの侵入が確認された3つの基地の内、レイクンヒースは1948年から米空軍の基地として利用されており、第48戦闘航空団が駐留。F-35AおよびF-15E戦闘機の本拠地になる。同基地は英国における米空軍最大の拠点で、2026年には核兵器基地になる予定があり、地元住民は反対している。ミルデンホールは英王立空軍基地だが、1950年から米空軍との共同基地になっており、冷戦下では爆撃機部隊や偵察機部隊が駐留していたが現在は第100空中給油航空団が拠点としている。フェルトウェルは英王立空軍基地で1960年代から、在欧アメリカ空軍が駐留、現在は近くのミルデンホール空軍基地とレイクンヒース空軍基地に駐留する米空軍隊員の住宅地、兵站拠点として利用されている。
英海軍空母クイーン・エリザベスをドローンが偵察
ドイツメディアのビルト紙によると、11月22日、ドイツ北部のハンブルク港近くに停泊していたイギリス海軍の空母「クイーン・エリザベス」の近くを正体不明のドローンが飛行していると報告された。ドローンは長時間にわたり空母を偵察した後、姿を消したという。ドイツ警察はドローンジャマーを使ってドローンの迎撃を試みたが、ドローンは迎撃を逃れ、ドローン、犯人も行方不明のままとなっている。ただ、ドローンの飛行経路をたどると、ハンブルク港にある3つのターミナルのうちの1つであるトレロート・ターミナル付近で消息を絶ったと報告されている。ハンブルグ港はドイツ最大の港であると同時に、ヨーロッパ第3位のコンテナ港だが、トレロート・ターミナルは中国海運大手の中国遠洋海運集団(COSCO)が2022年に出資、権益の一部を取得した場所だ。同企業は国有会社、つまり、中国共産党配下の企業で、ドイツ国内で物議呼んだ。
ドローンによる空母の偵察というと記憶に新しいのが今年4月に明らかになった横須賀の海上自衛隊・米海軍基地で無許可飛行のドローンによって停泊中の護衛艦「いずも」や米海軍空母「ロナルド・レーガン」が撮影された事件だ。動画が中国の動画共有サイトに投稿された事で初めて明らかになり、ドローンに侵入された事自体に気づいていなかった事で、安全保障上の懸念を引き起こした。
各国は軍事拠点や重要インフラ施設のドローン対策を進めているが、今回、複数箇所で侵入を許したように抜本的な対策が現状無い事が浮き彫りになった。