アメリカ陸軍は使用不能状態だった携行式防空ミサイル「FIM-92 スティンガー」1900基を改修し、再度、利用可能な状態に戻した。
米陸軍は23日、約1900基のスティンガーミサイルの改修、近代化が完了したことを発表した。改修が行われたスティンガーは”使用不可能”とされていたもので、再活性化し、更にアップグレードを行った形だ。この改修はスティンガー耐用年数延長プログラム (SLEP) の一環になり、古いパーツを交換し、耐用年数が10年延長された。更に新しい機能として昨今の脅威となっている無人機・ドローンに対する対策が強化されている。また、新たに生産するよりは改修の方がコストパフォーマンスがよく、ミサイル1発あたり、約5万ドルのコスト削減になっている。
SLEPは陸軍に1426基、海兵隊に1168基あった旧式化して使用できなくなったスティンガーミサイルを耐用年数を延長することを目的に2017年に始まったプロジェクト。当時はそこまで緊急性はなかったが、2022年2月にロシアによるウクライナ侵攻が始まり、需要が急増。しかし、1980年代に開発されたスティンガーは1990年代に改良型ブロックIを開発して以降、目立った改修は行われおらず、ウクライナ侵攻が始まるまで20年間も製造されていなかった。つまり、生産ラインは閉じていたことになり、生産に必要な部品の生産も止まっていた。これらの生産ラインの復活は簡単ではなく、直ぐに量産はできなく、2022年4月時点で量産は1年待ちと言われていた。
そこで、米国政府は古くなった2700基の改修を進める予算を承認した。そして、今回、その内の70%の改修が終了したことになる。これは当初、計画されていた16カ月の納期より4カ月早く、改修を完了している。これが、ウクライナに送られるのか、米陸軍在庫になるのかは不明だ。一方、米政府はスティンガーの生産元であるレイセオン社に対し、ウクライナに供与するためのスティンガー1300基を生産する契約を結んでいる。ロシアによる侵攻当初の2月、3月はウクライナはアメリカに毎日500発のスティンガーが必要だと訴えていた。現在は様々な防空兵器が揃ったことでスティンガーの需要は減っているが、ウクライナ支援のため、各国が提供したこともあり、在庫補充するための注文が相次いでいる。